4代連続GI馬を送る日本を代表するサイアーライン
ジャックドールが優勝(C)netkeiba.com、撮影:高橋正和
これまで前半スローから後半ピッチを上げる逃げ戦法だった4歳ジャックドール(父モーリス)も、逆に、飛ばしてリードした前半の貯金で逃げ込む形の多かった5歳パンサラッサ(父ロードカナロア)も、明らかに強くなっていた。
途中から良馬場に回復したとはいえ、時計のかかる洋芝の2000mでもパンサラッサが主導権を主張するのはみんな分かっている。だが、タフな芝コンディションを読んだ吉田豊騎手(パンサラッサ)は、前半1000m通過「57秒6」でリードした宝塚記念2200mや、同じく「57秒6」で飛ばした中山記念1800mとは異なり、今回の前半1000m通過は「59秒5」。
全体に時計がかかるタフな洋芝とはいえ、パンサラッサにとっては、きわめて楽なマイペースだった。
さらに飛ばすイメージのでき上がっていた逃げ馬の強み。どの馬も4コーナーまで捕まえに出なかった。これに追い込みにくい馬場コンディションが加わり、パンサラッサは厳しい流れだった宝塚記念とほぼ同じような上がり37秒台で粘り切り、中山記念のように最後13秒5に落ち込まなかった。
パンサラッサは遠征したドバイターフあたりから逃げ戦法に幅を加えている。
勝ったジャックドールは、パンサラッサとは異なりレコード勝ちした金鯱賞の前後半「59秒3-57秒9」=1分57秒2が象徴する前半スローの逃げ馬。だが、強敵相手の大阪杯2000mを緩みないペースで0秒5差に粘った経験を糧に、折り合い面で大きく成長していた。
たまたま今回はタフな馬場でレースの後半は「61秒7」も要しているが、後半にピッチを上げて逃げ込む脚質だったから、自分から後半スパートして勝負を決める差し馬のようなレースができたのだろう。
大きな成長が確かめられたので、この後の目標は天皇賞(秋)挑戦となった。行く馬がいれば、もう自身で先手を主張する必要はなく、同じ先行タイプの動きに合わせたレースができる。種牡馬「グラスワンダー」→「スクリーンヒーロー」→「モーリス」→の父系は、すでにピクシーナイトなどで4代連続GI馬を送る日本を代表するサイアーラインに育っているが、ジャックドールもここに加わってきそうだ。
2番人気の4歳牝馬ソダシ(父クロフネ)は、落ち着き満点の素晴らしい状態に映った。
また、4コーナーまで破綻を思わせるほど厳しいレースではなかったはずだが、追っての伸びを欠き0秒6差の5着。
須貝調教師は「これで距離適性がはっきりした。体つきが成長を遂げたぶん、距離適性がより強く出るようになった」と、秋はマイル路線になることを明言した。芝のマイルは計3勝のGIを含み4戦4勝。マイルCSを目標にすることになる。
ただ、白毛のソダシはもう7勝もしているが、1番人気での勝ち星は2歳時の4勝のうち2つだけ。3歳以降の3勝はすべて1番人気ではなく、1番人気になった3戦は【0-0-0-3】。もともと意外性にあふれるソダシは、再び変身するかもしれない。
良馬場発表以上にタフな芝コンディションになり、レース上がりは「37秒7-12秒7」。
最速上がりは、最後方から直線だけ差を詰めたハヤヤッコの36秒6。2分01秒2の勝ち時計以上にきびしいレースだった。底力を問われる秋のビッグレースに結びつく部分が大きいはずである。