小さくても走る血統×雄大な馬格を伝える種牡馬の破壊力
先週の血統ピックアップ
・9/4 新潟記念(GIII・新潟・芝2000m)
中団馬群を追走したカラテが直線で楽に抜け出し、ユーキャンスマイルの追撃を抑えて2つめの重賞を獲得しました。マイル路線に距離を短縮して頭角を現した馬ですが、今回は2000mに距離を戻しての戦い。年齢を重ねたことで、現在はこのぐらいの距離がちょうどいいのかもしれません。新潟外回りコースは、昨年の関屋記念で2着と健闘した経験があります。
父トゥザグローリーはキングカメハメハ産駒で、現役時代に京都記念など5つの重賞を制覇。有馬記念では3着と好走しました。本馬の他にゲンパチルシファーがプロキオンSを勝って重賞ウィナーとなっています。2代母レイサッシュはステイゴールドの半妹で、3代母ゴールデンサッシュはサッカーボーイの全妹。
ロイヤルサッシュにさかのぼるこのファミリーは、馬体を小さく出すという特徴があるので、フレンチデピュティ、トゥザグローリーと、雄大な馬格を伝える種牡馬を2代連続で交配したのが正解だったのでしょう。カラテ自身の馬体重は532kg。小さくても走る血統で馬体が大きく出たのですから破壊力があります。天皇賞・秋が楽しみになってきました。
・9/4 小倉2歳S(GIII・小倉・芝1200m)
スタートで出遅れて最後方に置かれたロンドンプランが、直線で大外から突き抜けて夏の小倉2歳王者の座につきました。前半3ハロンが33秒2と、当レースの平均的なラップよりも速いペースで展開したとはいえ、他馬とはまったく違う脚で突き抜けたレースぶりはケタ違いでした。
父グレーターロンドンは中京記念をレコード勝ちしたマイラー。その父は大種牡馬ディープインパクト、母は桜花賞2着馬ロンドンブリッジという良血馬です。現2歳の初年度産駒は血統登録頭数が44頭。JRAでは5頭出走し、2頭が勝ち上がっています。生産した下河辺牧場は、息子ロンドンプランの生産牧場でもあります。
自家生産馬である父をバックアップするために、同牧場は良質な繁殖牝馬を割り当てており、母パッションローズは現役時代に芝短距離で4勝を挙げた活躍馬でした。母がスプリンターだったので、距離はマイルぐらいまでかもしれませんが、先々が楽しみな逸材です。
今週の血統注目馬は?
・9/11 長久手特別(2勝クラス・中京・芝2000m)
中京芝2000mと相性のいい種牡馬はディープインパクト。連対率25.7%は、2012年以降、当コースで産駒が20走以上した60頭の種牡馬のなかで第1位。当レースにはアナレンマとラブアンバサダーが登録しています。
注目は前者。当コースで行われた前走の常滑特別は3着と敗れましたが、昇級初戦だったことを考えれば上出来です。過去、当コースでは[2-0-1-0]。約3ヵ月ぶりの実戦ですが、成長力豊かな血統なので、さらに強くなっている可能性は高いでしょう。
今週の血統Tips
現地時間9月3日、米デルマー競馬場で行われたパシフィッククラシックS(G1・ダート10ハロン)は、断然の1番人気フライトライン(Flightline)が後続を大きくちぎり、19・1/4馬身差で圧勝しました。これまでのレースぶりから大器であることは誰もが認識していたと思いますが、ここまで凄いのか──というのがアメリカの競馬ファンの率直な感想だと思います。
通算成績は5戦全勝。1走あたりの平均着差は約12馬身半。今回は2ハロンの距離延長で、デビュー以来初めての10ハロン戦でしたが、着差が縮まるどころか大きく開きました。勝ちタイム1分59秒28は、2003年にキャンディライド(ガンランナーの父)が記録した1分59秒11のレースレコードに0秒17と迫るものでしたが、ラスト100mは流していたので、まともに追っていれば更新していた可能性が高いでしょう。
父タピットは2014年から3年連続で米リーディングサイアーとなった名種牡馬。ここ最近はイントゥミスチーフなどの後輩種牡馬に抜かれ、影が薄くなっていたのですが、種牡馬生活の終盤になって特大の一発を送り出しました。いずれフライトラインが種牡馬として成功すれば、息切れ気味だったエーピーインディ系がアメリカ生産界の中心に返り咲くかもしれません。