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【菊花賞】勝負強さをフルに発揮した田辺騎手の積極策

  • 2022年10月24日(月) 18時00分

予測された以上に厳しい流れでのコースレコード


重賞レース回顧

アスクビクターモアが優勝(C)netkeiba.com


 ランキング上位馬が2000mの天皇賞(秋)に回り、混戦がささやかれた三冠目の菊花賞3000mだった。しかし、予測された以上に厳しい流れ「58秒7-62秒7-61秒0」となり、結果は3分02秒4のコースレコード。

 馬場の形態も芝コンディションも異なるが、2001年の阪神大賞典でナリタトップロード(1999年の菊花賞馬)が独走で記録した阪神3000mのコースレコード3分02秒5が更新された。

 ほぼ同じような条件なら「長距離戦こそ時計勝負だ」の金言もある。接戦だった上位3頭の菊花賞3000mでのレベルは少しも低くない。

 勝負強さをフルに発揮して勝ったアスクビクターモア(父ディープインパクト)は、日本ダービーレコードだった今年、直線早めに先頭に立って粘り腰を発揮。天皇賞(秋)予定のダノンベルーガとの3着争いをしのぎ切った際と同じような田辺裕信騎手の積極策が大正解だった。

 セイウンハーデス(父シルバーステート)が飛ばした流れを追走する形は、実際には自身が主導権をにぎってレースを作っているのと同じで、ライバルの格好の目標になっている。それを承知で最終4コーナー手前から自分でスパート。ハナ差とはいえ勝ち切ったから見事だった。スタミナ型のエース級が誕生しないと、競走体系全体が盛り上がらない。

 届いたか、とも見えた2着ボルドグフーシュ(父スクリーンヒーロー)は惜しかった。今回は課題のスタートで出負けしなかった。前半はズブいので後方追走になったが、巧みに馬群をさばいて3コーナー手前から進出、4コーナーでは好位に追い上げていた。早めにスパートしてリードしたアスクビクターモアにハナ差及ばなかったが、阪神の内回りで、勝ち馬のスパートが絶妙すぎた結果だった。

 厳しい流れで、最後はスタミナ勝負になった結果、レース上がり「37秒0」を上回ったのは1-3着馬3頭と、最後方近くから差を詰めてきた5着シホノスペランツァ(父ブラックタイド)の4頭だけ。最速は36秒3だったボルドグフーシュ。同馬は2000m以上のレースを9戦し、うち7回まで最速上がりを記録したことになった。

 3着ジャスティンパレス(父ディープインパクト)は、神戸新聞杯で4馬身も離したボルドグフーシュに直線で逆転される形になったが、今回は好位集団が固まって終始もまれる展開になり、自分のリズムでスパートできなかった。この時計で乗り切っているから長距離戦は大丈夫だが、2着馬にはスタミナ負けの印象も残った。トライアルで激走しすぎてしまったかもしれない。

 直前に3番人気に評価の上がったドゥラドーレス(父ドゥラメンテ)は、直線で伸びかかったが、最後、勝ち馬とは1秒0差。まだ距離適性はなんとも言えないが、今回は2000mを超える距離の経験なしが思われたた以上の死角となった。

 1番人気で8着にとどまったガイアフォース(父キタサンブラック)は、クロフネ譲りの芦毛というより、白毛のソダシ(父クロフネ)に近いと思えるほど光り輝く芦毛。

 今回はアスクビクターモアに逆襲されてしまったが、ジャスティンパレスと同様、苦しい馬込みの中でこちらはインに押し込められていた。4コーナーを回って見せ場は作ったが、最後は多分にスタミナ切れか。2000m1分56秒8の快時計が示すように、ベストは2000m級だろう。

 もし1800-2000mのレースでソダシとの対戦が実現するなら、かつてのオグリキャップ=タマモクロスの対決と同じように盛り上がるかもしれない。

 アスクビクターモアが勝って、現体系になって23年、前走セントライト記念組が4勝目を記録したが、23年間で3着以内の69頭は、「神戸新聞杯組」…40頭(16勝)。「セントライト記念組」…14頭(4勝)。「その他のステップ」…15頭(3勝)となった。

 また、2番手グループとされた3歳馬が中身の濃い菊花賞を展開したことにより、だいたいは苦戦傾向の天皇賞(秋)に挑戦の3歳馬の評価は、だいぶ上がりそうである。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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