富士フイルムフォトサロン大阪で開催された第7回競馬写真家写真展『翼 サラブレッド2022』に行き、さまざまな競馬の写真を鑑賞した常石さん。久しぶりに訪れたスタジオで、フォトグラファーの久保吉輝さんを取材しました!
秋のGI開幕戦、10月2日のスプリンターズS(GI・芝1200m)はジャンダルム号・荻野極騎手が制覇。
続く10月16日の秋華賞(GI・芝2000m)はスタニングローズ号・坂井瑠星騎手が制覇。バラ一族の大輪が咲きましたね。僕もよく取材させていただいた橋口元調教師が管理していたローズキングダム号には思い入れがあります。バラ一族の馬は好きでした。
▲初GI制覇を果たしたスタニングローズと坂井瑠星騎手(C)netkeiba.com
荻野極騎手と坂井瑠星騎手は、競馬学校32期生の同期だそうです。そしてバレットも同じ小牧太騎手の長女ひかりさんだそうですよ。2人ともこれがGI初勝利。それぞれの思いが爆発したことでしょう。おめでとうございます。今後の活躍が楽しみです。関係者だけではなくファンにも多くの感動をくれました。やっぱり競馬にはドラマがありますね。
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今月は、フォトグラファーの久保吉輝さんを取材させていただきました。僕が最初にお会いしたのは騎手時代に調教師の飯田先輩たちと久保さんの写真展に行った時です。ちょっと違う視点で写真を撮っておられるので見入ってしまいました。写真を通じて競馬の面白さが伝わったような気がしました。
常石 こんにちは、久しぶりです。今日はよろしくお願いします。スタジオに来たのは何年ぶりかな?
▲フォトグラファー、久保吉輝さんと
久保 そうやな、落馬して2年目くらいにお母さんと来られましたね。
常石 あー、早々に写真を撮っていただきましたね。それから東京競馬場へダービーの写真撮りに行くので一緒に行くか? と誘ってくださりダービーへ連れて行ってもらいましたね。
久保 あの時のディープインパクトのダービー制覇、豊騎手は、素晴らしかったな。今でもはっきり覚えています。あの瞬間を撮ることができて、カメラマンやっていてよかったと思う。ディープインパクトの強さを見ましたね。
常石 競馬ファンとして初めて見たレースでした。すごい人にびっくりしたのと、ディープの走りに驚き、あれがサラブレットか? と思いました。豊騎手が「飛ぶ」と言いますが、ホンマやなと思いました。豊騎手の手綱捌きにも圧倒されました。
▲ダービーを見に行った時の新幹線の切符
久保 一緒に行ってよかったな。
常石 ありがとうございました。そうそう、4月にノーザンホースパークに行ってディープインパクトのお母さん・ウインドインハーヘアに会ってきました。ポニーと仲良く元気に過ごしていました。1991年生まれだそうだからもう30歳くらいかな。ディープの分まで長生きしてくれているんだなーと嬉しくなりました。久保さんはディープインパクトの写真集を出版されていますよね。あの写真集は、貴重品ですね。
武豊騎手の写真集「ファンファーレ武豊」も見ましたが、素晴らしかったです。久保さん独特のふんわりとした柔らかい表現で写された、豊騎手の素顔がとっても素敵だなと思いました(写真のことはよくわからないけど)。
久保 ありがとうございます。えらいほめてもらって恐縮です(笑)。
常石 浅田次郎さんとの「サイマー!」という本も読みました。はじめはサイマーの意味が分からなかったのですが競馬のことだったんですね。
久保 1歳違い、住んでいるのも関東と関西でしたが、不思議なご縁ですね。
常石 写真に出会ったのは、どんなきっかけだったんですか?
久保 東京の薬科大学に進学していたんですが、終戦後間もなかったので、お金もなく大変な時期でした。それでも親父がお金を出してくれると言ったので、イギリスに留学しました。イギリスは、騎馬民族なのであっちこっちで競馬のレースが行われていて面白かったですね。ローリングストーンズのコンサートなどもあって、勉強より遊んでたな。
ちょうど日本では、ハイセイコーが人気になっていた頃ですね。イギリスのウインザーレースを見たりしているうちに馬の賢さや人との信頼度などに興味深々になり、写真を撮るようになりました。カメラを独学で勉強し、写真を撮るのが面白かったです。
撮った写真は週刊誌や雑誌などに投稿していました。その後JRAから連絡が入り、競馬の写真を撮りはじめ、優駿にも写真が載るようになりました。この頃は競馬専門の写真家はほとんどいませんでした。
常石 貴重な人材でしたね。写真を撮るときはどんなことに気を付けているんですか?
久保 まずは、光を大事にしています。光を意識しないと間違った情報が伝わってしまうので気を付けています。
それと、視点、色、イメージ。レースの様子や光景が浮かんでくるようにとらえます。一枚の写真を見て何を感じるか? 何を思い浮かべるか? どう感じるか? 人と馬が一緒になって信頼関係を作っていく様子などいろいろ思い浮かべると面白いですよ。
本当の馬の美しさを感じてほしいと思い、撮り続けています。
▲写真をとるうえで大事にしているのは“光”(提供:久保吉輝さん)
フィルム写真は、大変だったけどよかったですよ。今はデジタルカメラが主流になっているけど、フィルムの頃も色合いに味があっていいなあと思います。特に白黒写真はいい色合いを出していますね。
ヨーロッパには長年住んでいましたが、ヨーロッパは、光が弱いから柔らかく優しく表現できるところが、面白いと思います。
常石 ヨーロッパは白夜だから日は長いけど弱いんですね。今年も凱旋門賞に日本馬が行きましたが、なかなか難しいですね。
久保 日本馬とは走り方が違うから難しいですが、いつか凱旋門賞を勝利するときがくるでしょうね。昔のミスターシービーのような走り方をする馬が好走してくれると思うな。日本ダービーも来年60年目ですからずっと競馬は見ていたいですよ。
常石 カメラを持たれて何年ですか? ずっと写真を撮り続けてください。凱旋門賞を勝つ日本馬を撮りたいでしょう。
久保 カメラ人生50年です。そうですね。夢が叶うといいね。
常石 楽しみにしています。1階のショールームには、いろいろ写真が展示されていますね。
久保 今、テンポイントの写真を展示しています。また11月にもイベントがあるから来てください。
▲テンポイントの写真が展示されているショールーム
常石 テンポイントは、鹿戸騎手が騎乗でしたね。懐かしいですね。
イベントも楽しみです。またお邪魔します。シャンプーハットの恋ちゃんの絵も沢山あり面白いです。スタジオの外壁にも書かれていますよね。
久保 恋ちゃん、落書きしてたな(笑)。
常石 久しぶりに来たので目印になってわかりやすかったです(笑)。貴重なお話をありがとうございました。
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オカン 富士フイルムフォトサロン大阪で、第7回競馬写真家写真展『翼 サラブレッド2022』が開催されていました。毎年楽しみに観賞させていただいていたので、フォトグラファー久保さんの取材は、私もとっても楽しみでした。ちょうど久保さんがいらして、勝義も会いたいと話していたので厚かましく取材のお願いをしたのですが、快諾していただき感謝です。この時、内藤律子さんもいらっしゃいました。とねっこカレンダーを買ってきました。
▲『翼 サラブレッド2022』の様子
初めて久保さんの写真「ハロン」を見たときは衝撃を受けました。
20と書かれたハロン棒に西陽が差し、その影がずーっと伸びていました。この一コマには、馬も騎手も映っていませんが、物語がありメッセージが込められているのを感じました。レースの様子や西陽に映る馬体の輝き、騎手の表情など想像がどんどん広がっていきます。
久保さんが話されていた光・イメージ・色・視点等全部が凝縮された1枚でした。
「またゲートが開いた瞬間」馬たちの後ろ姿から蹄鉄の動きと馬の脚の筋肉の表情が映し出された作品です。18頭の馬の蹄鉄は、それぞれの表情を持ち、強さを感じます。
久保さんにどうやって撮影されたんですか? と質問すると芝生の下にもぐっています。と言われ納得しました。そんなふうにしないと撮れない写真ですね。
私もカメラを持ってウロウロ撮っていますが、いろんな方向から見てカメラを動かしていかないとですね。撮りたい写真をイメージする工夫が必要だと感じます。
カメラの視点だけではなく何事も視点を変えてみることが大事だなーと心が広がります。我が息子を見る目も、視点を変えてゆとりをもって眺めていきたいとおもいます。
このコラムが出る日に御殿場スポーツセンターへパラ馬術大会に参加します。
ライバルは、自分自身。ファイト! 頑張れ息子よ!
つねかつこと常石勝義&オカン