▲武豊騎手の“逃げ”に迫る(c)netkeiba.com
香港カップでジャックドールに騎乗する武豊騎手。名手の手綱さばきが注目されますが、関係者内でも非常に評判が高いのが、武豊騎手の“逃げ”です。
遡れば、名馬サイレンススズカでの鮮やかな逃げ切り勝ち、近年ではキタサンブラックとのコンビでの逃げが印象的。同厩舎のトウケイヘイローとのコンビでは、2013年の香港カップで2着に逃げ粘りました。
名手の技とは、どういうものなのか? 騎手の同期で、サイレンススズカとの対戦経験がある蛯名正義調教師、そしてキタサンブラック・トウケイヘイローを輩出した清水久詞調教師に、それぞれの見解を語っていただきました。
(取材・構成=東京スポーツ・藤井真俊)
武豊騎手のエスコートで、馬がリラックス
──武豊騎手の“逃げ”というと、どのようなイメージがありますか?
蛯名 “柔らかい”イメージかな。ほわ〜んとしてるというか…。
──ほわ〜ん?? もう少し分かりやすくお願いします(笑)。
蛯名 馬への当たりが強くなくて、気分よく走らせる感じ。表情で言えば馬の目が“ギュッ”と逆三角形になって走らせているんじゃなくて、穏やかな表情で走らせてるんだよ。
──何となく分かってきました。強要するのではなく、馬の気持ちも尊重しているんですかね?
蛯名 そうそう。「行きます!」とか「行かせます!」みたいな逃げじゃない。「ほな一緒に行こか…」みたいなイメージだよね。
▲2着に大差をつけて逃げ切った1998年金鯱賞のサイレンススズカ(撮影:高橋正和)
──そういう逃げだと馬がリラックスして走れる?
蛯名 うん。無駄な力みや緊張感がないから、エネルギーのロスが少なくなるよね。そうすると