▲「競馬博士」坂井瑠星騎手の短期連載、第二弾がスタート! (撮影:榎本良平)
“超”のつく競馬オタクの坂井瑠星騎手が、豊富な知識と自身の経験から種牡馬を解説する「使える種牡馬辞典」。第二弾の今回は、リーディングを賑わす注目の種牡馬から、自身の中央GI初制覇のコンビとなったスタニングローズの父・キングカメハメハなど、レジェンド種牡馬もお届けします。
今回取り上げるのはルーラーシップ。現役時代の背中を知る四位調教師や福永騎手が絶賛したのが、乗り味の良さ。その武器は産駒にもしっかりと受け継がれているそうです。が、しかし、それがレースに直結するかとなると、そう単純ではないそうで…。本来の能力を出し切るために、必要な条件とは?
(取材・構成=不破由妃子)
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共通点はふたつ「乗り味の良さ」「気性の難しさ」
第二回で取り上げるのは、今年の獲得賞金順で8位、勝ち馬頭数順で9位につけるルーラーシップです。
父キングカメハメハ、母エアグルーヴという超のつく良血馬であり、現役時代には、クイーンエリザベス2世Cを含む重賞5勝(20戦8勝)をマーク。ルーラーシップが現役当時、僕はまだ中学生でしたが、毎週テレビにかじりつくように競馬を見ていたので、その活躍はよく覚えています。
種牡馬としても、初年度産駒からキセキ(2017年・菊花賞)を送り出し、現2歳が7世代目。2019年のコーフィールドC(豪G1)を勝ったメールドグラースもルーラーシップ産駒ですね。
▲瑠星少年を釘付けにした現役当時のルーラーシップ (撮影:下野雄規)
▲管理したのは名伯楽の角居勝彦元調教師 (撮影:下野雄規)
ルーラーシップと聞いて、まず思い出されるのは…、そう「出遅れ」です。ファンのみなさんのなかでも、そのイメージが強いのではないでしょうか。
ラストランとなった2012年の有馬記念では、2番人気の支持を集めつつ、6馬身近い大出遅れ。それでいて、最後は猛然と追い込んで3着にきたわけですから、秘めた能力は相当なものだっただろうなと想像ができます。
ちなみに、ルーラーシップ産駒では、僕もリバプールタウン、アオイテソーロ、カラミンサ、タイセイモンストルなどで7勝を挙げさせてもらっていますが、今のところ、ゲートにそれほどマイナスなイメージはなく、その点に関しては、お父さんの血がそのまま伝わっている感じはしませんね。
僕が感じる産駒の共通点はふたつ。ひとつ目は乗り味の良さ、ふたつ目は気性の難しさです。
僕が直接聞いたわけではありませんが、現役時代のルーラーシップの背中を知る四位調教師や(福永)祐一さんが、その乗り味の良さを絶賛されていたとのこと。跨った瞬間、「あ、乗り味いいな」と思う産駒が本当に多いので、そこはきっちり産駒が受け継いでいるのでしょうね。
今年、2世代目がデビューしたシルバーステート産駒もそうです。競走馬の乗り味は、よく車に例えられますが、まさに「高級車」といった乗り味です。
乗り味がいい馬は、単純に走る馬が多いです。これは間違いありません。いっぽうで、乗り味の良さがレースに直結するかとなると、そう単純ではありません。