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【有馬記念 AI予想】好走馬の傾向からも侮れない!? AIの指名した伏兵は波乱を演出できるか

  • 2022年12月19日(月) 18時00分

単勝オッズ3.1倍(1番人気)のドルチェモアが優勝(c)netkeiba.com


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)


高額配当決着となる可能性は高くなさそうだが…


AIマスターM(以下、M) 先週は朝日杯FSが行われ、単勝オッズ3.1倍(1番人気)のドルチェモアが優勝を果たしました。

伊吹 陣営はもちろん、手綱を取った坂井瑠星騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。素晴らしいスタートを決め、一旦はハナを切りに行くような素振りも見せましたが、結局道中はインコースの3番手を追走。好枠を活かし切る最高のポジション取りだったと思います。その後も淡々とレースを進め、ゴール前の直線半ばですんなりと外へ持ち出し、残り200mの地点を過ぎたあたりで先頭に。一旦は並ばれかけたレイベリング(3着)、最後の最後に急追してきたダノンタッチダウン(2着)をしっかり封じ切りました。後から振り返ってみると、ダノンタッチダウンとレイベリングもそれぞれ非常に良い競馬をしていて、勝ち切れなかったのが可哀そうに思えるくらい。2頭の健闘によってドルチェモアの強さがより引き立った――という印象です。

M ドルチェモアはデビューから3連勝でGI制覇。母のアユサンは現役時代に2013年の桜花賞を勝っています。

伊吹 現4歳の半姉アップストリームはJRAで2勝をマークしていますし、現3歳の全兄エンギダルマも今年のスプリングSで4着に食い込んでいましたね。母のファンだった方はもちろん、POGプレイヤーの中にも、デビュー前から注目していたという方がいらっしゃるのではないでしょうか。ちなみに、残念ながら現1歳の産駒はいないそうですが、今年生まれた当歳はレイデオロ産駒の牡馬とのこと。無事に育ったら相当な注目を集めることになるかもしれません。

M もちろん、晴れてGIウイナーとなったドルチェモアにも、これまで以上の注目が集まるはずです。

伊吹 ルーラーシップ産駒ですから、中長距離のレースで極端にパフォーマンスを落とす可能性はそれほど高くないはず。来春のクラシック戦線における主役の一頭と見て良いでしょう。ホープフルS組やこれから出世してくる馬もいますし、今後も選んだレースや相手関係によっては妙味あるオッズがつく場面もありそう。各レースで的確に取捨をジャッジするべく、昨日のパフォーマンスをいま一度じっくり検証しておきたいと思います。

M 今週の日曜中山メインレースは、国民的行事として親しまれてきた年末の大一番、有馬記念。
昨年は単勝オッズ2.1倍(1番人気)のエフフォーリアが優勝を果たしました。ちなみに、その2021年は3連単の配当が7180円どまり。近年に関して言うと、堅く収まりがちという印象を持っている方が多いかもしれません。

伊吹 3連単の配当が10万円を超えたのは、現在のところ2015年(12万5870円)が最後。過去10年の単勝人気順別成績を見ても、単勝1番人気馬は勝率が6割に、3着内率が8割に達しています。



M 人気薄で馬券に絡んだ馬もいるとはいえ、基本的には上位人気グループの馬を重視した方が良さそうですね。

伊吹 より細かく見ていくと、単勝2〜4番人気の馬は2012年以降[3-3-8-16](3着内率46.7%)、単勝5〜11番人気の馬は2012年以降[1-6-1-62](3着内率11.4%)、単勝12番人気以下の馬は2012年以降[0-0-0-50](3着内率0.0%)でした。超人気薄の馬を狙う場合も、買い目を作る段階で人気の中心となっている馬たちを無理に嫌ってしまわないよう心掛けるべきでしょう。

M そんな有馬記念でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ジャスティンパレスです。

伊吹 おおっ、あえて穴っぽいところを狙ってきましたか。

M ジャスティンパレスは3歳馬。2走前に神戸新聞杯を勝っているうえ、昨年末のホープフルSで2着に、前走の菊花賞で3着に食い込んでいます。ただ、今回は他にも実績馬がたくさんいるので、相対的に注目度が下がりそう。単勝12番人気以下ということはないと思いますが、単勝4番人気以内の支持を集める可能性も低いと見て良いでしょう。

伊吹 妥当と言えば妥当なところではあるものの、狙っている方にとってはまずまず魅力的なオッズがつきそうですね。Aiエスケープが高く評価しているという事実を踏まえたうえで、私はレースの傾向からこの馬の好走確率を見積もっていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?

伊吹 実績馬が強い点ですね。2016年以降の3着以内馬18頭中15頭は、既にGIを勝ち切ったことのある馬でした。



M これはわかりやすい。はっきりと明暗が分かれていますね。

伊吹 好配当決着となった2015年はGI未勝利のゴールドアクターとサウンズオブアースが1〜2着を占めたものの、その後はGIウイナーの信頼度がアップ。今年も該当馬がそれなりにいるわけですから、さすがにこの傾向は無視できません。

M 残念ながらジャスティンパレスはGI未勝利。5走前のホープフルSが勝ち馬と0.2秒差、前走の菊花賞が勝ち馬と0.1秒差だったとはいえ、7頭いるGI馬との力関係はこの馬が抱える不安要素のひとつと言えるでしょう。

伊吹 あとは直近のパフォーマンスも素直に評価したいところ。前走の条件がGI以外だった馬は2016年以降[0-0-0-19](3着内率0.0%)ですし、前走が国内のGIだった馬に限っても、前走で勝ち馬に1.0秒以上のタイム差をつけられた馬はすべて4着以下に敗れていました。



M なるほど。GI以外の前哨戦から直行してきた馬や、大敗直後の馬は割り引きが必要ですね。

伊吹 一応補足しておくと、2021年2着のディープボンドは、前走の凱旋門賞で勝ち馬から7.2秒差の14着に敗れていた馬。ただ、やはりある程度はここ最近の勢いを重視するべきだと思います。

M 先程も触れた通り、ジャスティンパレスは前走がGIの菊花賞で、勝ったアスクビクターモアとの差はわずか0.1秒。こちらの傾向からは高く評価して良いのではないでしょうか。

伊吹 戦績以外のファクターに目を向けてみると、ジャスティンパレスは血統も強調材料のひとつと見て良さそう。2016年以降はステイゴールド系種牡馬・ノーザンダンサー系種牡馬・ミスタープロスペクター系種牡馬の産駒が苦戦していました。



M ジャスティンパレスの父はディープインパクトで、これらの父系には属していません。

伊吹 ちなみに、父がステイゴールド系種牡馬・ノーザンダンサー系種牡馬・ミスタープロスペクター系種牡馬、かつ出走数が13戦以上の馬は2016年以降[0-0-0-37](3着内率0.0%)。馬券に絡んだのは極端にキャリアが浅い馬だけです。この条件に引っ掛かっている実績馬は、思い切って評価を下げようと思っています。

M 臨戦過程や血統に不安がないうえ、GIでもそれなりに善戦してきたジャスティンパレス。人気を考えるとそれなりに面白い存在と言えるのではないでしょうか。

伊吹 正直なところ、私は穴人気してしまうようならば軽視しようと考えていました。ただ、思ったよりも注目が集まらなさそうな雰囲気ですし、もう一度じっくり検討し直した方が良いのかもしれません。そのうえAiエスケープも高く評価しているわけですからね。人気馬絡みの目を削るなど、何らかの対策を講じたうえで買い目に組み込むことができればと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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