▲GI格上げ初年のフェブラリーS(撮影:下野雄規)
当コラムで扱う機会はなかったが、2022年は日本のダート競馬にとって、大きな転機の到来を告げる年となった。6月20日に「3歳ダート三冠」の24年創設が発表されたのに続き、11月28日には3歳だけでない「全日本的なダート競走の体系整備」についての方向性が公表された。「交流元年」と呼ばれた1995年以降、中央、地方間の人馬の交流が本格化し、特にダート路線にあっては97年に中央・地方交流重賞が「ダートグレード競走」として再編される一方、中央でも同年2月のフェブラリーSがGIに格上げされるなど、節目の年となった。
そこから四半世紀を経て、中央と地方はようやく、ダート路線の強化という共通の目標に向けて動き出したと言える。とは言え、JRAと地方の各施行者では、改革の先の未来像を巡って温度差も見える。今回、打ち出された方針を整理し、現時点で想定される問題点、改革成功の条件を探る。
3歳三冠に映るJRAの意図
そもそも、中央と地方が共同で何かを発表するのは、10年12月に双方の広範な発売協力を打ち出したのが初めてと言って良い。昨年6月の3歳ダート三冠の発表は、東京都内のホテルの広い宴会場で行われ、事前に制作されたPR映像も放映されるなど、発売協力の発表時と比べても派手だった。
▲ダート三冠発表時の記者会見(c)netkeiba.com
ダート三冠の舞台は3戦とも大井で、現在は地方馬限定の羽田盃と東京ダービーを中央馬にも開放し、7月に施行されているジャパンダートダービー(JDD)は10月に移設して「ジャパンダートクラシック(以下JDC)」に改称。競走距離は3戦とも現在と同じで羽田盃が1800m、残る2つが2000m。1着賞金額は羽田盃5000万円、東京ダービー1億円、JDC7000万円で、三冠達成時には8000万円のボーナスが設定され、合計で3億円となる。また、同じ席上で2、3歳ダート短距離路線の整備についても発表された。2歳段階から3歳春にかけて、各地に重賞級認定競走(ネクストスター)を設定し、頂点として兵庫チャンピオンシップ(園田・JpnII)の距離を、現在の1870mから1400mに短縮して配置する。
2つのうち、短距離の側は兵庫チャンピオンシップを除いて地方馬のみが出走できる設定となった。そこに、6月時点で未定とされていた3歳ダート三冠の設計が11月に発表されたことで、今回の改革の狙いがある程度、明確化した。端的に言えば、「ダート適性馬は地方に入って(入れて)下さい」というメッセージである。羽田盃の前哨戦として設定された雲取賞(2月中旬、大井・1800m)、京浜盃(3月中旬、同・1700m)の中央出走枠は各3頭。優先出走権は上位2頭とされ、羽田盃の中央馬は最大でも4頭止まりだ。
一方、東京ダービーも優先権は羽田盃上位3頭に加え、中央のユニコーンSの上位1頭(2着以内)に与えられ、やはり中央馬は最大4頭となった。JDCは中央枠が7頭に拡大されるが、羽田盃、東京ダービーの出走枠の設定からは、少なくとも当初は地方に入厩する方が狙いやすい設定には見える。
もちろん、能力の高い馬が3頭もいれば、