▲中山記念にダノンザキッドを送り出す安田隆行調教師(c)netkeiba.com
昨年の中山記念後、「中山に嫌な記憶が残っているのか全く走る気になってくれませんでした」というジョッキーコメントが報道されたダノンザキッド。2020年にデビューから3連勝でGI・ホープフルSを制覇した競馬場で一体何があったのでしょうか。
ホープフルS後は勝ち星を挙げられてはいませんが、常に重賞やGIの舞台で戦い続け、昨秋のマイルチャンピオンシップ、香港カップと続けて2着で再びのGI制覇へと近づいています。「去年とは状態が違ういま、中山での試金石」と話す安田隆行調教師に伺いました。
(取材・構成:大恵陽子)
毎日王冠から本格化を実感
──昨年はマイルチャンピオンシップ、香港カップとGIで続けて2着。再びのGI制覇まであと一歩でした。
安田 よく頑張りました。2歳の頃は連勝していましたが、いま考えると運が良かったです。実力というより、競馬の流れの中で上手く立ち回れたことで勝てたのかな、と。手前を替えないこともありましたし、厳しく言えば、恵まれていただけでした。
──デビューから無敗のGI馬誕生で注目が集まりましたが、いま振り返るとまだ中身が伴っていなかったんですね。
安田 昨年の春もまだ手前を替えないなどがありました。それが、去年の秋の毎日王冠では負けはしましたけど手前もちゃんと替えて、しまいも伸びて3着。勝ったサリオスは強くてレコードを出しましたし、続く香港では勝ち馬にぶっちぎられましたけど、この馬自身もホントよく走っています。毎日王冠くらいから「本格化してきたかな」と感じました。
──以前は道中、力んで走る場面も見られましたが、気性面の変化はいかがですか?
安田 北村友一騎手がダノンザキッドの気性とマッチして、上手くリズムを取って折り合いもつけているので、コンビの相性がいいんじゃないかなと思います。
▲追い切りでも入念にコンタクトを取る北村友一騎手とダノンザキッド(写真はマイルCS出走前、撮影:井内利彰)
皐月賞の頃は苦しがっていた
──昨年の中山記念ではレース後に「中山に嫌な記憶が残っているのか全く走る気になってくれませんでした」というジョッキーコメントがありました。前回、中山で走った時となると、皐月賞です。
安田 あの頃は正直言ってガタガタでした。年明けから「どうしようか」と悩みながら進めていて、「これじゃあちょっと……」ということで皐月賞後に休ませました。あそこで休養したことがいいきっかけになったと思います。
──日本ダービーを目指している途中で骨折も判明した時ですね。今回、また中山を選んだ理由は?
安田 皐月賞と去年の中山記念と結果が出せなかったので中山は良くないと思っていたんですけど、去年と今とでは状態が違うので、いまの状態でどれだけ違う結果が出せるかなと楽しみにしています。中山での試金石になりますね。どれだけ走れるかやってみたいです。
▲いまの状態でどれだけ違う結果が出せるか(写真は昨年の香港、撮影:高橋正和)
(文中敬称略)