レース全体が追い込み競馬の中、先行して抜け出し快勝
レモンポップが優勝(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規
1番人気のレモンポップ(父Lemon Drop Kidレモンドロップキッド)の着差以上の完勝だった。カフェファラオ、ジュンライトボルト、クラウンプライド…などがサウジカップに遠征し、波乱もありえると思えたが、1-4番人気の4頭が上位を独占。上位陣のレベルは低くなかった。
とくにレモンポップは初のGIを制し、これで11戦【8-3-0-0】。課題のあった1600mも楽々と克服し、新チャンピオン誕生を大きくアピールすることになった。これで2020年のモズアスコット、2021年、2022年のカフェファラオに続き、4年連続「外国産(USA)馬」が勝ち馬となった。
レモンポップの1分35秒6は、武蔵野Sをハナ差2着時と同タイムだが、武蔵野Sの自身の中身は「60秒6-上がり35秒0」。かなり楽なペースで距離適性を問われない直線勝負だった。
だが、今回は当時よりタフなコンディションのなか「59秒3-上がり36秒3」=1分35秒6。タイム短縮はならなかったが、自身の前半1000m通過は1秒3も速いペースで、レース全体は完全な追い込み競馬。これを先行して抜け出して快勝。
テン乗りだった坂井瑠星騎手の非の打ちどころなしの素晴らしい騎乗が重なり、危なげない内容に一段の総合力アップが示された。マイルを超える距離に挑戦の可能性は低いので、このあとの体調しだいですでに登録済みのドバイゴールデンシャヒーン(3月25日、メイダン競馬場、ダート1200m)への挑戦があるかもしれない。
余力を残して先頭に立った根岸Sの1200m通過は1分10秒1だった。さらに高いレベルのビッグレース展望はマイル以下のスピードレースになる。
レースの前後半は「46秒6-49秒0」。差し=追い込み馬台頭のレースになったとはいえ、7歳レッドルゼルの2着強襲は見事。距離を克服するために意識的に下げる策を取ったのが大正解。1600m出走3戦目にして初の連対(2着)確保だった。上がりは最速の35秒7。7歳馬だけに大きな変わり身はどうかだが、陣営は「いい形でドバイへ行くことができる」と、ゴールデンシャヒーン(ダート1200m)に向けて強気になった。
3着メイショウハリオ(父パイロ)は、さらに素晴らしかった。スタート直後につまずいて鞍上の浜中俊騎手が落馬するのではないかと思えるほどの大きなロス(5-6馬身の出遅れ)。あまりにも痛かった。4コーナー最後方から大外に回って直線猛追。自身は「60秒4-35秒8」=1分36秒2。置かれたので最後の直線勝負に徹するしかなかったが、さすがGI馬の底力をみせた。たら、れば、ないが、メイショウハリオには「まともだったら勝ち負けに…」の無念はある。
上昇4歳馬の魅力を買われて2番人気のドライスタウト(父シニスターミニスター)は、きびしいペースに巻き込まれた形で4着。迫力あふれるフットワークも、パワフルな馬体も際立っていたが、もっともキャリアが浅く7戦目。タイトな位置取りになったうえ、きつい流れの1600mの経験がない死角が出てしまった。
1400mに1分23秒4(稍重)で圧勝の時計はあるので、慣れてくればこなせるはずだが、スピード決着のマイル戦以下より、1800-2000m級の方が合うのではないかとも思えた。
上位入線組で惜しかったのは、公営から挑戦してきた4歳牝馬スピーディキック(父タイセイレジェンド)。後方追走から直線は馬群に突っ込んだが、なかなかスペースがなく、二度、三度と進路変更を余儀なくされてしまった。結果は6着だが、もっと上位に台頭して不思議なかった能力はみせている。
伏兵として注目したセキフウ(父ヘニーヒューズ)は、M.デムーロ騎手のコメント通りのムラな気性で「前回は進んでいかなかったのに、今回は逆にテンから力んでしまった」。