スマートフォン版へ

【中山記念】陣営の手腕、鞍上の好騎乗が光った勝利

  • 2023年02月27日(月) 18時00分

世代交代を思わせる一面も


重賞レース回顧

中山記念を制したヒシイグアス(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 GI級の好カードを制したのは、ベテラン7歳のヒシイグアス(父ハーツクライ)だった。風が強かったためもあり、先手を奪った武豊騎手のドーブネ(父ディープインパクト)の作ったペースは「前半1000m通過60秒0」のスローペース。そこで後半は「47秒1-35秒4」の切れ味勝負。

 勝ったヒシイグアスは体調を崩して約8カ月ぶりの実戦とあって、手の戻った松山弘平騎手は「前半は馬のリズムを壊さないように」と無理に位置を取に出ずに慎重なスタンス。これが大正解で、行きたがるライバルもいた中にあって、中団より後方よりを追走しながらきわめてスムーズだった。勝負どころから接戦になった直線も、あまり詰まることなく前がガラッと開く絶妙の騎乗となった。

 体調を崩し、長期休養明けでも好調時と変わらないように仕上げた陣営の手腕も見事だったが、あえて勝ち気に出なかった松山騎手の好騎乗が光った。これで再三乗り替わるヒシイグアスだが、コンビの成績【4-0-0-1】となった。再三の休養があるので7歳馬ながら16戦【7-5-0-4】。再びビッグレースに挑戦することになる。

 2着に追い込んだラーグルフ(父モーリス)は、格上がりの形になった中山金杯を勝ったばかり。デキの良さは目立ったが、この組み合わせでは格下感もあって8番人気。人気馬の案外な内容に恵まれたとはいえ、ヒシイグアスとほぼ互角の上がり34秒7。さらに上昇が期待できる。5頭出走していた4歳馬が「2、3、5、6、7」着。揃って上位に食い込み、世代交代を思わせる一面も感じられた。

 マイペースのドーブネも4歳の成長株。前回の惜敗と同じで、並ばれてからもう一歩の物足りなさが課題だが、先手を主張しなくともレースができるので、もう大崩れはない。

 5歳シュネルマイスター(父Kingmanキングマン)と、あきらめて後退し8着になったイルーシヴパンサー(父ハーツクライ)の2頭は直線の不利が大きかった。スローな流れと、強い風で外に回るのは不利な状況とあって直線はインに入ったが、イルーシヴパンサーは前が詰まって身動きができずに追うのを断念。

 シュネルマイスターは、同じようにインに入ってきたイルーシヴパンサーとぶつかりながら狭くなり、それでも懸命に伸びたが4着(0秒2差)止まり。これは実力負けではなく、昨年後半のスランプは脱している。すぐに巻き返せるはずだ。

 5着スタニングローズ(父キングカメハメハ)は、うまく好位の外でスローの流れに乗ったが、追い比べでもう一歩(0秒2差)。久しぶりの男馬相手でパンチもう一歩だった。

 さらに上昇を期待された5歳ソーヴァリアント(父オルフェーヴル)は、パドックの後半になって少々イラついた仕草を見せたがイレ込みではなく、意外なほどの凡走。骨折休養明けで体調もう一歩だったオールカマー時とは敗因が異なる。これまでこういう凡走はない馬だっただけに残念。距離は敗因ではない。これで中山コース【1-2-0-3】に対し、他のコースでは、【4-0-1-0】。1着失格1回。中山コースはあまり得意ではないのか。

 2番人気で11着のダノンザキッド(父ジャスタウェイ)は、元気いっぱいというよりパドックから気負い通し。ゲートでも暴れて出走停止処分を受けるなど、気難しさがフルに出てしまった。これでドバイ遠征は不可能になった。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング