▲サウジC制覇の裏側(c)netkeiba.com
「世界の矢作」こと、矢作芳人調教師の快進撃が止まりません。先月のサウジアラビア遠征では、日本馬初の快挙でパンサラッサがサウジCを制覇。世界最高賞金の約13億6千万円を獲得し、今週末のドバイワールドCに出走します。
いまや、国内外から大注目を集める「世界の矢作」の動向。今年はどんな戦略でいくのか? 矢作調教師に、2023年の海外年間スケジュール、各国の最新状況から主催者の評価まで、要チェックの貴重な情報を教えていただきます。
(取材・構成=不破由妃子)
3度目の挑戦でサウジ攻略、鍵は「スパイク」
──2月25日のサウジCデーは、バスラットレオンで1351ターフスプリントを、パンサラッサでサウジCを勝利。パンサラッサと吉田豊さんには、またすごいものを見せていただきました。
矢作 ゴールに入った瞬間、自分でも信じられないような思いで見ていました。
──レース後も、「この世でこんなことが起こるなんて信じられない」とコメントされていましたね。私は先生のそのコメントが信じられなかった(笑)。だっていまや、“世界の矢作”ですからね。その先生が、「信じられない」なんておっしゃるとは。
矢作 いやいや、やっぱり賞金(約13億円)がねぇ。そういう意味の「信じられない」でもあります。ゴールの50mくらい手前で見ていたんだけど、残り1ハロン手前くらいまでは声が出なくてね。200mを切ったところで、2番手のジオグリフが手前を替えずに止まったように見えたから、そこで初めて「勝つかも!」と思って、ようやく声が出ました。
そこからはゴールまでずっと叫んでいたけど、自分の前を通過したときもまだ信じられないような思いでしたよ。もちろん1着を獲りに行っているわけだけど、現実に獲れちゃうんだって信じられないくらいの思いになったのは、マルシュロレーヌのBCディスタフと今回でしたね。
▲日本馬初、サウジCを制したパンサラッサ(c)netkeiba.com
──「よく稼ぎ、よく遊べ!」が矢作厩舎のモットーですから、早くからサウジCには狙いを定めていたのかなと思っていました。
矢作 パンサラッサに関してはそうですね。12月の香港の前から考えていましたよ。
──サウジCデー参戦は、2021年から3年連続となりましたが、サウジならではの対策などはあるのでしょうか。
矢作 ドバイもそうですけど、スパイクには神経を使います。今回も、勝負仕様といえるスパイクを履かせましたよ。日本は2ミリくらいまでの突起しか認められていないけど、サウジは7ミリまで出せるので、ジャスティンとパンサラッサに関しては、前脚は2ミリ、後ろ脚は限度一杯の7ミリを履かせました。スパイクの重要性は、基本的に後ろ脚ですからね。
──蹴っぱりが強化されると。
矢作 そうそう、蹴っぱりなので。どんなスパイクを履かせたのか、これ以上は言えないんですけどね。
──そこは企業秘密。
矢作 それほどのもんじゃないけど、まぁね(笑)。
▲強さの秘密はスパイクにあり(c)netkeiba.com
──出走している馬は、みんなスパイクを履いているんですか?
矢作 ん〜、基本的には履かせていると思うけどね。ただひとつ、俺らがどうなんだろうって興味深いのは