▲現在ドバイ遠征中の矢作芳人調教師(提供:矢作芳人厩舎)
「世界の矢作」こと、矢作芳人調教師の快進撃が止まりません。先月のサウジアラビア遠征では、日本馬初の快挙でパンサラッサがサウジCを制覇。世界最高賞金の約13億6千万円を獲得し、今週末のドバイワールドCに出走します。
いまや、国内外から大注目を集める「世界の矢作」の動向。今年はどんな戦略でいくのか? 矢作調教師に、2023年の海外年間スケジュール、各国の最新状況から主催者の評価まで、要チェックの貴重な情報を教えていただきます。
(取材・構成=不破由妃子)
矢作師が直接、主催者と補助金交渉することも
──今週末に行われるドバイ(ドバイWC・パンサラッサ、ドバイゴールデンシャヒーン・ジャスティン、ゴドルフィンマイル・バスラットレオン、UAEダービー、コンティノアール)と、4月のオーストラリア(クイーンエリザベスS・ユニコーンライオン、オールエイジドS・ホウオウアマゾン)以降の海外遠征について、すでに視野に入っているレースはありますか?
矢作 何にも決まってないよ。まぁブリーダーズCには行きたいなとか、パンサラッサは香港にはあまり向いてないなと思ったので、パンサラッサ以外の馬で暮れの香港に行ける馬を考えたい、というのはあります。もちろん、凱旋門賞もあきらめてはいないです。
──ちょっと意外な気がしたんですが、凱旋門賞への参戦は、昨年のステイフーリッシュ(14着)が初めてだったんですよね。
矢作 そうなんですよ。凱旋門賞は、やはり一番お金が掛かるレースですから。
──それも障壁のひとつ?
矢作 それは間違いない。たとえば、香港、サウジ、ドバイは、主催者側からの招待なんです。ブリーダーズカップも、けっこう補助金が出る。でも、凱旋門賞は、向こうからの補助金は一切出ません。
──主催国によって、そんなに差があるんですね。
矢作 ありますよ。場合によっては、俺自身が直接、主催者と補助金について交渉したりもします。あと、凱旋門賞に関しての課題というと、とにかく待遇がよくない。それは国民性も関係しているから、フランスギャロが悪いわけではないけれど、アウェイ感がとにかく強いです。
▲昨年の凱旋門賞に出走したステイフーリッシュ(撮影:高橋正和)
──それはきっと、これからも変わらないでしょうね。
矢作 そう、変わらない。だから、打破していかなくちゃいけないんです。あとはね、こういう取材で言っておきたいのは、まだまだトライ&エラーが足りないということ。そこについては、けっこう自分が切り開いてきたなと思っていて、自分がブリーダーズカップを勝ったことで、今年はけっこう日本馬が行くと思いますし、サウジもドバイもどんどん参戦する馬が増えている。
凱旋門賞に関しては、さっきも言ったようにとにかくお金が掛かるので、どんな馬でも連れていけるわけではないというのが現実なんですが、もっといろんなタイプの馬を連れて行って、トライ&エラーを繰り返すことによって、日本の馬は必ず勝ちます。勝ちますよ。近い将来、勝つのは間違いない。でも