またも荒天に見舞われた高松宮記念
ファストフォースが悲願の戴冠(c)netkeiba.com
今年もまた渋馬場にたたられた。4年連続して「重、不良」馬場が連続したことになった。勝った7歳ファストフォース(父ロードカナロア)は、5歳時の2021年に小倉で行われたCBC賞(芝1200m)を当時のJRAレコード1分06秒0で逃げ切ったスピード型。もちろん今年も伏兵視されていたが(重の昨年は1分08秒6、0秒3差の9着)。不良にまで馬場が悪化して評価は難しくなった。
鞍上の団野大成騎手(22)はゴール寸前にもうガッツポーズの嬉しいGI初制覇。管理する西村真幸調教師(47)もGI初勝利。7歳ファストフォースは3歳初夏のデビューで6戦未勝利のあと、4歳時に門別で3勝してJRAに復帰した馬。派手なタイプではなく、レコード勝ちのCBC賞は8番人気。GI制覇の今回は12番人気だった。
ファミリーは、もう半世紀も前に輸入された牝馬コランディア(父Auriban)が牝祖で、1972年の春の天皇賞馬ベルワイド、牝馬ルイジアナピット、リトルアマポーラなどのビッグレース勝ち馬を送り続けてきた名牝系。苦しい不良馬場を乗り切ったのは牝系の秘める伝統の底力なのだろう。
父ロードカナロアには、母の父にStorm Catストームキャットが登場する。日本では代を経た近年になって2-4代前にその名が出現することが多くなったストームキャットの血を内包する馬が、2013年ロードカナロアを筆頭に、2019年ミスターメロディ、2020年モズスーパーフレア、2021年ダノンスマッシュ、そして2023年ファストフォース。次つぎと高松宮記念を勝っている。今年は、2着した牝馬ナムラクレア(父ミッキーアイル)の母の父も、大種牡馬ストームキャットだった。
そのナムラクレアは、極悪馬場のなか懸命に伸びたが1馬身及ばずの2着。「きょうは勝った馬と騎手をほめるしかない」。悔しい2着の浜中騎手が初GIを制した若い騎手を讃えたのは、いかにも激闘のビッグレースの直後らしかった。
8歳トゥラヴェスーラ(父ドリームジャーニー)が、今回がテン乗りだった丹内騎手でインから3着に突っ込んだのは見事。昨年もインから一旦は先頭に並ぶ勢いで「クビ、ハナ、クビ」差の4着だったのがこの伏兵であり、昨年の高松宮記念から今回まで、これで8戦連続して「0秒0-0秒3」差の大接戦。いつも人気薄だからすばらしい。
1番人気のメイケイエール(父ミッキーアイル)は、スタートしてしばらくは良かったが、例によって行きたがってしまった。この馬場コンディションで、もまれるのを避けようのない内枠5番。馬場の巧拙ではなく、途中で気持ちが切れたのは仕方がない。重馬場の昨年5着は、大外17番枠だった。
3番人気の新星アグリ(父カラヴァッジオ)は、うまく好位の外で流れに乗り、4コーナーを回って一度は先頭に立ったが、そこで息切れ。距離はまったく問題なかったが、悪化しすぎた馬場と、強敵相手と厳しいレース経験のなさが出てしまった。良で再注目。
伏兵人気のトウシンマカオ(父ビッグアーサー)は、好気配が目立ったが、跳びの綺麗なタイプなのでこういう馬場では流れに乗れない。こちらも良で巻き返したい。
5着グレナディアガーズ(父フランケル)は、距離1200mは展開ひとつで対応できるはずだが、1200mは3戦すべて、馬場など取り巻く状況にあまりにも恵まれない。