▲JRA開催スト 続報 (撮影:橋本健)
前回の当コラムでは、中央競馬の厩舎従業員の俸給表を巡る労使交渉と、厩務員4労組のうち3つが3月18日に開催ストに入った(翌19日は解除)経緯について触れた。当時も言及した通り、一連の動きは国内大手企業の春闘と時期的に重なっていて、「春闘交渉の紛糾」と認識した人も少なくなかっただろう。
実際には3月の交渉は目先の賃上げ交渉というよりは、俸給表というルールの問題で、具体的には2011年から施行された「新賃金体系」の廃止を労組側が求めていた。結果はスト戦術を予告していた4労組のうち、全国競馬労働組合(全馬労)執行部が3月17日に一方的に離脱を表明し、スト自体は「流れ解散」のような形で終わった。
ただ、年中行事としての春闘交渉は手つかずの状態で、4月に「第2ラウンド」が始動した。経緯は後述するが、新賃金対象者に1万円のベースアップを行うことで21日未明に妥結した。
新賃金対象者に1万円のベースアップ
3月17日まで続いていた4労組の共闘は、規模の大きさからも、栗東の全馬労と美浦の日本中央競馬関東労働組合(関東労)の2労組が柱になっていた。関東労は1000人を超える組合員を擁し、全馬労も1000人近い規模。両者の協力抜きにはスト戦術に実効性が生じないことは、今回の事態で証明された。
近年は温度差が目立っていたとは言え、両者の共闘の歴史は長く、枠組みが崩れたことで、ストに入った3労組は態勢の立て直しを迫られた。3月には新賃金体系廃止の一点を掲げ、「ゼロか100か」の交渉に臨んでいたが、例年の春闘では賃金に限らず、諸手当や労働災害、パワハラ、果ては競走でのゲート入りへの厩舎従業員の立ち会いといった問題に至るまで、多様な要求が出される。
こうした部分を整理する時間も必要で、組合側による春闘の趣旨説明は3月30日に行われた。3労組はここでも改めて新賃金体系の廃止を要求する一方、旧賃金対象者については定期昇給実施のみの要求にとどめた。全馬労も同じタイミングで別個に趣旨説明をしたが、新賃金体系問題については妥結済みで、通常の賃上げなどの要求を提出した。3労組の団体交渉は4月13日に始まり、2度目の20日は長い交渉の末、21日午前2時ごろ妥結した。
焦点は新賃金対象者に対するベースアップ幅で、使用者側の日本調教師協会(手塚貴久会長)は13日に8,000円を提示したが折り合いがつかず、決着は1週後に持ち越されたが、既にこの時点で、労使関係に明るい関係者の間では「2度目に1万円を提示してくるのでは」との見方が広がっていた。20日の3労組交渉では、他の政策・制度要求の処理にも時間がかかり、交渉が2日目にずれ込むと思われたが、深夜の妥結となった。
3月のスト局面を経て、今春闘は異例の形となった。3労組のスト権批准は生きていたが、全馬労の離脱で「張り子の虎」と化しており、共闘復元の時間もない状況では、スト戦術は事実上、封印を強いられた形。一方、使用者側も相手の足元を見て