C.ルメール騎手の絶妙な勝ち方
ジャスティンパレスが優勝(c)netkeiba.com
鮮やかに天皇賞(春)を制した4歳ジャスティンパレス(父ディープインパクト)は素晴らしかった。同時に、あまりにも残念だったのは、連覇がかかっていた1番人気馬タイトルホルダー(父ドゥラメンテ)の競走中止のアクシデント。
先頭に立っていた2周目の3コーナー過ぎでこらえ切れずにバランスを崩したように映った。そこで横山和生騎手は異変を察知したのだろう。タイトルホルダーがピッチを上げないので、それならと並んできたアイアンバローズを突き放そうとする様子もなく、これ以上の負担がかかるのを防ぐようにゆっくりペースダウン。競走を中止した。
まだ詳細な診断の結果が出ていないが、異変を察知した時点でレースを続けなかった横山和生騎手の判断は、実際には大きな勇気を伴うことだった。まだ先のある5歳のタイトルホルダーのためである。大事に至らないことを願いたい。
勝ちタイムは、阪神の稍重だった昨年の3分16秒2とわずか0秒1差の3分16秒1。ただし、序盤の1000mを59秒7で飛ばしたアフリカンゴールドが、前半1400m通過地点で心房細動を発症して競走中止となり、早くも先頭に立つ形になったタイトルホルダーの前半1600m通過は、コースが異なるのであくまで参考だが「1分36秒4」。2000m通過地点は「2分02秒0」だった。
昨年、自分のリズムで主導権を握ったペースは1600m通過「1分37秒4」、2000m通過「2分03秒6」だった。アイアンバローズ(失速して13着)、アスクビクターモア(同じく11着)、ディープモンスター(同じく14着)など後続の積極的な追走があった今年は、最初からレース全体の流れが前傾だった。
昨年の3分16秒2は前後半「1分37秒4-1分38秒8」。同タイムにも近い3分16秒1で決着した今年の前後半は「1分36秒3-1分39秒8」。バランスは完全なハイペースで後半の方が3秒5も遅くなっている。
C.ルメール騎手のジャスティンパレスは中団より前にいたが、終始前のグループの動きを見つつ早めにはスパートしていない。4コーナー手前でライバルの動きを確認しながら一気にスパートした。ロングスパートを歓迎するタイプではないことを前走の阪神大賞典で理解したC.ルメール騎手の絶妙な勝ち方だった。
馬体を絞って昨年とまったく同じ504キロで一旦先頭に立ったディープボンドが、3年連続して天皇賞(春)2着の珍しい記録を打ち立てた(2021年は502キロ)。ビッグレースでは、1990年代にナイスネイチャが有馬記念を3年連続3着の記録を残しているが、この2着は十分に偉大な記録とすべきだろう。
7歳シルヴァーソニック(父オルフェーヴル)の3着も立派。6歳の暮れに初重賞ステイヤーズSを制し、海外遠征に強いステイゴールド系らしく7歳になってサウジアラビアでも重賞を制し、天皇賞(春)3着。通算【6-3-7-6】。昨年のスタート直後の落馬を別にすると、着順掲示板に載らなかったのは条件級だった4歳時の一度(6着)だけである。
昨秋の菊花賞3000mでジャスティンパレスを封じて勝ったアスクビクターモア(父ディープインパクト)、2着ボルドグフーシュ(父スクリーンヒーロー)は、そろって今回逆転されたが、渋馬場の3200mのスタミナ勝負が合わなかったとすると、2000-2500m級のビッグレースで再逆転をめざすことになる。