父系は20世紀最高の種牡馬 タスティエーラがダービー制覇
先週の血統ピックアップ
・5/28 日本ダービー(GI・東京・芝2400m)
好位追走のタスティエーラが残り200mで先頭に立ち、ソールオリエンス、ハーツコンチェルト、ベラジオオペラの追撃を抑えて優勝しました。上位4頭の着差はクビ、ハナ、ハナ差。1〜4着が同タイムのダービーは90回のレース史上初めてです。勝ったタスティエーラはサトノクラウンの初年度産駒。サトノクラウンはイギリスの2歳G1を勝ったライトニングパールの全弟で、現役時代、宝塚記念や香港ヴァーズなど芝中距離で6つの重賞を制覇しました。種牡馬としては他にウヴァロヴァイト(スイートピーS)やトーセンローリエ(アネモネS)を出しています。
現時点で東京芝の連対率19.6%に対し、中山芝は10.8%と、東京向きの傾向が出ています。母パルティトゥーラは芝1600mで3勝。3勝クラスまで出世しました。タスティエーラが初仔で、現2歳の半妹スパルティート(父ブリックスアンドモルタル)も評判がいいようです。クラフテイワイフにさかぼる牝系は、これまでにカンパニー、トーセンジョーダンなど多くの活躍馬を生み出していますが、ダービー制覇は初めて。これまではトーセンホマレボシの3着が最高着順でした。パルティトゥーラは繁殖牝馬として大成功する可能性があり、ここを起点としてファミリーの枝葉を大きく伸ばしていくものと思われます。
・5/28 目黒記念(GII・東京・芝2500m)
絶妙のペースで逃げたディアスティマをゴール直前でヒートオンビートがアタマ差とらえました。これまで重賞で2着3回、3着3回となかなか勝てなかったのですが、テン乗りのレーン騎手がうまく導き、6歳にして重賞初制覇を果たしました。父キングカメハメハは先週のグロリアムンディ(平安S)に続いて2週連続重賞制覇。半兄ラストドラフト(父ノヴェリスト)は京成杯を勝ち、半弟シュタールヴィント(父ロードカナロア)は京都2歳Sで4着という成績があります。母マルセリーナは桜花賞とマーメイドSを制した名牝で、繁殖牝馬としても優秀です。
本馬はラストタイクーン3×4というインブリードを持ちます。ラストタイクーンはダービー馬タスティエーラの3代父で、その父系はダークエンジェルやメーマスなど通じ、ヨーロッパのスプリント〜マイル路線で存在感を増しています。
今週の血統注目馬は?
・6/3 由比ヶ浜特別(2勝クラス・東京・芝1400m)
東京芝1400mに強い種牡馬はイスラボニータ。2013年以降、当コースで産駒が20走以上した107頭の種牡馬のなかで連対率38.1%は第1位。リサリサは前走、当コースで行われた1勝クラスを勝ってここに臨みます。昇級初戦となりますが、コース適性を味方につければ善戦可能でしょう。
今週の血統Tips
ダービー馬タスティエーラの父系をさかのぼると、20世紀最高の種牡馬といわれるノーザンダンサー(1961年生)に到達します。欧米ではノーザンダンサー系が大繁栄しており、アメリカのケンタッキーダービーは直近10年間で3頭、仏ダービーは6頭、愛ダービーは9頭、英ダービーに至っては10頭の勝ち馬すべてがノーザンダンサー系で占められています。
しかし、日本においてはかなり希少で、昨年までの直近10年間はゼロ。2006年のメイショウサムソン以来17年ぶりとなります。平成以降の35回に範囲を広げても、他にフサイチコンコルド(1996年)がいるだけです。世界的にみてわが国がいかに独自の血統世界を構築しているかがお分かりいただけると思います。これがわが国の馬産の強みといえるでしょう。