昨年1番人気6着のエフフォーリアもこの意外なデータに該当していた(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規
年末の有馬記念と並び、グランプリ(Grand Prix)の名を冠する宝塚記念。関西でも有馬記念に匹敵する大レースを開催しようと、1956年創設の有馬記念より4年ほど遅れて創設されたファン投票方式のレースです。ちなみに有馬記念の有馬はJRA二代目理事長である有馬頼寧伯爵の人名が由来ですが、宝塚記念は阪神競馬場の所在地である兵庫県宝塚市の地名が由来となっています。
近年の宝塚記念と言うと、1番人気不振、牝馬の躍進、先行有利などがキーワードに挙がってくるものと思われます。たしかに年によってはかなり“前残り”のイメージもある宝塚記念ですが、それに対して少し意外なデータを提示しておきましょう。
■宝塚記念出走馬の前走上がり3ハロン順位別成績
A群 190戦【22-15-11-142】勝率12% 単勝回収119%
B群 131戦【 0- 6-11-114】勝率 0% 単勝回収 0%
合計 321戦【22-21-22-256】勝率 7% 単勝回収 70%
※2001年以降、2006年の京都開催も含む。
※2018年2着のワーザーは外国馬。宝塚記念がJRA初出走。
A群は前走の上がり3ハロン順位が1位〜5位だった馬、B群は上がり3ハロン順位が6位以下だった馬の宝塚記念成績です。地方や海外など、前走がJRA以外だった馬は、2走前や3走前など直近のJRA競走を参照しての集計。宝塚記念は圧倒的にA群の馬を買うべきレースですね。
21世紀(2001年以降)のみならず、20世紀の宝塚記念を見ても同様の傾向は出ており、“前走上がり3ハロン6位以下”で宝塚記念を勝てた馬は1996年のマヤノトップガン(前走上がり3ハロン6位)1頭だけ。これらの中には2014年3番人気9着ジェンティルドンナや2018年1番人気6着サトノダイヤモンド、同じく2022年1番人気6着エフフォーリアといった人気馬も含まれていました。
今年“前走上がり6位以下”の宝塚記念出走予定馬は下記の7頭であり、まずはこれらの評価を下げることから宝塚記念の予想を始めるべきだと考えています。今年の7頭はいずれも人気薄になりそうですが、年によっては人気馬の半数以上が該当することもあるデータ。来年以降に向けて覚えておいても損はないと思います。
アスクビクターモア
カラテ
ジオグリフ
ドゥラエレーデ
プラダリア
ユニコーンライオン
ヴェラアズール
ウマい馬券では、ここから更に踏み込んで宝塚記念を解析していきます。印の列挙ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論にぜひご注目ください
■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、『ラップギア』と『瞬発指数』を構築し、発表。2008年、単行本『タイム理論の新革命・ラップギア』の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。『ラップギア』は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。