スマートフォン版へ

競馬とは縁のない生活から…2頭のオーナーに! 愛馬との運命の出会い

  • 2023年07月18日(火) 18時00分
第二のストーリー

メジャーアスリートとオーナーの今井多満美さん(提供:今井多満美さん)


“置物のごとく動かない馬”の大ファンに


「かなり以前になりますが、競走を引退した後の馬たちの厳しい現実を書籍を通じて知ったこともあり、競馬とはほとんど縁のない生活を送っていました」

 そう話す今井多満美さんは、今では元競走馬で乗馬のメジャーアスリートと現役競走馬のスターリーソングのオーナーだ。競馬や馬との距離が縮まったきっかけは、結婚だった。 

「主人が競馬が好きで、一緒にレースを楽しむようになりました」

 楽しみながらも、競馬を引退した馬たちの現実を忘れられなかった今井さんは、2014年頃から引退馬の支援団体「ローリングエッグスクラブ」のサポーターとして支援をするようになった。以降、新潟競馬場や地方の競馬場での引退馬関連のイベントでボランティアをしたり、JRAの引退馬関連イベントに足を運んで、引退馬の情報に触れてきた。

 引退馬について下地ができてきた頃、出会ったのがメジャーアスリートだった。川崎競馬所属の馬たちが調教を行っている小向に夫とともによく見学に通っていた。その時、たまたまある調教師と知り合い、交流が生まれ、厩舎見学をさせてもらった。その際にまるで置物のごとく動かない馬がいた。

「実はこの馬が中央で走っている時に馬券を獲らせてくれたんですね(笑)。それで記憶に残っていたんです。その馬が馬房の中で微動だにせず大人しくて、父のダイワメジャーによく似た可愛い顔をしていましたので、私たち夫婦は大ファンになりました」

第二のストーリー

地方所属時のメジャーアスリート(提供:がんばさん)


 メジャーアスリートは2009年5月2日、浦河町の松田牧場で誕生した。父ダイワメジャー、母スプリンターキャット、母の父がStorm Cat で、半姉にオープンで活躍したテンザンデザートがいる血統だ。

 JRA時代はG1レーシングの所有で美浦の高木登厩舎の管理馬として走った。JRAでは24戦3勝で、2011年の全日本2歳優駿2着や準オープンの斑鳩S勝ちなど能力のあるところを見せていた。そして2014年にJRAから地方の川崎競馬場に移籍。そして今井さん夫婦と、運命の出会いを果たすことになった。

 以来、南関東所属時には、競馬場へも応援に駆けつけた。その後、馬主が替わり川崎から浦和へと移籍した。浦和にいる頃から成績も伸び悩むようになり、引退が近づいているように感じた。

「メジャーの走っている後ろ姿を目にした時に引き取ろうかなという思いが強くなりました」

 そして今井さんが夫に引き取りたい旨を伝えようとした時、ほぼ同時に「引き取ろう」という言葉が返ってきた。

 だが地方に移籍してからのメジャーアスリートの馬主を知っているわけでもない。それでも何とか引き取りの意志を伝えたいと厩舎宛や厩舎経由で馬主宛に手紙も書いた。だが進展はなく時間だけが過ぎ、知らぬ間に引退して行方知れずになるのではないかと、やきもきする毎日だった。

 やがて浦和から園田に移籍。今井さんはやはり厩舎に手紙を書いた。この時はうまく連絡がとれ、調教師とやり取りすることができた。

 今井さんはやり取りと並行して、引退後のメジャーアスリートの預託先探しを始めた。

第二のストーリー

JRA所属時のメジャーアスリート(提供:G1サラブレッドクラブ)


(つづく)

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング