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競馬とは縁のない生活から…(2)愛馬2頭の“輝く”セカンドステージのために

  • 2023年07月25日(火) 18時00分
第二のストーリー

ジムカーナ競技に参加したメジャーアスリート(提供:今井多満美さん)


メジャーが私の頭をコツンと突いて…


 メジャーアスリートの引退後の預託先候補は、今井多満美さんの夫が見つけてきた。そこは将来馬の世界を目指す人のための学校、馬事学院だった。まだ引き取りが決定したわけではなかったが、いつそうなってもいいように見学に行った。そこで引退馬事情など様々な話を聞き、馬事学院に預けることを決めた。それから間もなく、メジャーアスリートを管理する調教師から2020年6月に引退することになりそうとの連絡があった。そこからは調教師の配慮もあってスムーズに事は進み、馬事学院でのセカンドステージが始まった。

「ほどなく夫と一緒に会いに行ったのですが、つい最近まで競走馬をしていたとは思えないほど大人しかったです。メジャーと私たちで記念写真を撮影した時に、メジャーが私の頭をコツンと突いたんです。よろしくねみたいな感じなのかなと思ったりしまた」

 大人しい性格のメジャーアスリートは、競走馬から乗馬への転向も順調だった。

「大人しいこともあってすぐに新入生のクラスを担当するようになりました」

 初めて参加したジムカーナ競技ではデモンストレーションで走行したり、競技自体でも2位に入った。初心者向けの競技だったが、今井さん夫婦にとって、嬉しい出来事だった。

「2021年にNHKの『逆転人生』という番組で高知競馬が舞台となった回があったのですが、撮影場所が馬事学院だったんです。その時にメジャーアスリートも出演したんですよ」

 こう話す今井さんの声は弾んでいた。

「メジャーアスリートのTwitterに、番組に出演したことをツイートしたら、JRA時代のオーナーのG1レーシングさんも、元気で過ごしているのを喜ぶようなツイートをしてくださいました」

■生徒さんたちにお誕生日を祝ってもらうメジャーアスリート(提供:今井多満美さん)


「日々生徒さんに可愛がってもらい、元気に活躍している姿を見ると、メジャーのセカンドステージは本当に充実していて輝いていると思います」

 メジャーアスリートは様々な経験を生徒たちとともに重ね、今後も乗馬として成長を続けていくだろう。

「きっと恩を返してくれますよ」


 今井さんには、もう1頭スターリーソングという愛馬がいる。

「夫がクラブで1口出資をしていた馬で、中央でなかなか勝てないままでも頑張っていました。そんなスターリーを引き取りたいと夫が言い出しました」

第二のストーリー

もう1頭の愛馬、スターリーソング(提供:今井多満美さん)


 スターリーソングは、2018年3月26日、新ひだか町の金球美さんの牧場で生まれた。父エスポワールシチー、母ウディバードソング、母の父がWoodmanという血統だ。JRA時代のオーナーは広尾レース。栗東の高柳大輔厩舎の管理馬として走り、11戦したが未勝利に終わった。そしてサラブレッドオークションに出品された。

 当時の今井さんは現在の事業を起こす前で、製薬会社に勤務していた。

 その安定した収入があるうちにと、今井さんは地方競馬の馬主資格を取得していた。サラブレッドオークションに参加するには馬主資格が必要なので、早速取得したその資格が生き、ハラハラしながらも無事に今井さんが落札した。

 当初はメジャーアスリート同様に乗馬の道を歩ませようとも考えた。だがまだ3歳と若いこともあり、競走馬として輝いてほしいという思いから、地方競馬に舞台を移した。

「スターリーソングを引き取った時、一生面倒を見てくれる人に出会えたのはこの子にとって本当にラッキー、きっと恩を返してくれますよ、と馬事学院の野口代表に言われた言葉が胸に響きました」

 その言葉通り、スターリーソングは転籍から2戦目で見事に初勝利を飾った。

(つづく)

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北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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