▲今週のWASJに初出場する坂井瑠星騎手(撮影:下野雄規)
世界から名手が集う「ワールドオールスタージョッキーズ(WASJ、8月26日、27日、札幌競馬場)」に、26歳の坂井瑠星騎手が初出場します。
坂井騎手といえば国内GIだけでなく、サウジアラビアではバスラットレオンとのコンビで1351ターフスプリントを勝つなど、国内外に活躍の場を広げる若手ホープ。オーストラリア遠征ではジョアン・モレイラ騎手に験担ぎでジョッキーパンツを借りるほどの仲なのだとか。
そんな国際派の坂井騎手が「今年前半から出場したいと思っていた」というWASJ初出場に向けて意気込みを語ります。
(取材・構成:大恵陽子)
「同じ競馬場でも、レースの質が全然違う」WASJの楽しみ
──WASJに出場決定、おめでとうございます。初出場が決まった時はどんなお気持ちでしたか?
坂井 1〜2カ月前からずーっとそればかり意識していたので、「よかった」と思いました。松山弘平さんとずっと接戦で、1勝差で勝つことができて、まずはそれがよかったです。
──出場騎手の選定方法の一つが「リーディング上位3名(東西リーディングや昨年のMVPなどを除く)」。6月25日までの今年の勝利数で決定しますが、松山騎手53勝に対し、坂井騎手は54勝(地方、海外含む)。どれか1つでも取りこぼしていたら、という大接戦でした。
坂井 出場できるチャンスがある、と今年前半から思っていて、せっかく出られるなら出場したいと願っていました。
──これまでのWASJを見てどんな印象を受けていますか?
坂井 ここ2年は北海道に参戦していないんですけど、それまではずっと夏は北海道にいて、「いつか出たいな。羨ましいな」と見ていました。ジョッキーの顔ぶれが一気に変わるので、同じ競馬場でも他のレースとは質も全然違いますし、見ていて面白いシリーズだなと思います。
──海外からは昨年の凱旋門賞をアルピニスタで勝ったルーク・モリス騎手や、日本でもお馴染みのジョアン・モレイラ騎手などが参加します。
▲昨年の凱旋門賞を制したアルピニスタとルーク・モリス騎手(撮影:高橋正和)
坂井 凱旋門賞当日のフォレ賞でエントシャイデンに騎乗していて、凱旋門賞は現地観戦しました。アルピニスタについては華奢な馬だな、というイメージが残っています。
モレイラ騎手とは海外で会うと話すこともあって、優しくてフレンドリーなジョッキーです。今年のオーストラリア遠征(オールエイジドSでホウオウアマゾンに騎乗)では僕が騎乗するレースの1つ前でモレイラ騎手が勝ったので、験担ぎみたいな感じで道具を貸してもらいました。ホウオウアマゾンには彼のジョッキーパンツで乗ったんです。
──そんなつながりがあったんですね。15年WASJで優勝した後は“モレイラ旋風”が巻き起こりましたよね。
坂井 とにかく勝っていて、すごかったですよね。僕が乗っていた馬もモレイラ騎手に乗り替わって勝たれました。当時は彼と圧倒的な差がありましたけど、今はあの時よりは詰まっていると思うので、また一緒に乗れるのが楽しみです。
▲今年のWASJに出場するジョアン・モレイラ騎手(撮影:高橋正和)
「WASJは臨機応変に乗ることが大事」
──他にもフランスやアメリカからもジョッキーが参戦します。国によってジョッキーの特徴はどう変わりますか?
坂井 分かりやすいのはフランスとアメリカ。レースの流れが全く異なるので、両者は対極な印象です。アメリカはとにかく前半から速いペースで飛ばして、最後まで何とか粘らせる競馬で、ジョッキーもそういう乗り方をします。
それに対してフランスはどスローで、折り合いや瞬発力を生かす乗り方をするジョッキーが多いです。
──国によって大きな違いがありますね。
坂井 馬のフォームも違うので、ジョッキーのフォームも違うと思います。その国の競馬に合った乗り方ができるジョッキーがいろんな国で活躍できるんじゃないかな、と思っています。短期免許で来日するジョッキーでも、世界でどれだけ実績があっても日本ではあまり結果を残せないジョッキーもいれば、すぐにフィットして勝つジョッキーもいますから。
▲短期免許で来日し、今年の日本ダービーを制したダミアン・レーン騎手(撮影:下野雄規)
──WASJのようなジョッキーレースは抽選で騎乗馬が決まるので、初めて乗る馬に当たることがほとんど。そのルールならではの面白さや難しさがありそうです。
坂井 今回の場合はJRAでの実施で、僕にとっては知っている馬たちですから、そこはちょっとアドバンテージがあります。普段の競馬でもテン乗りが多いので、そんなに意識することはないですけど、乗るジョッキーが変わるので、予測できないことが起こる可能性は高いと思います。
──普段のレースなら、各ジョッキーの進路取りの特徴なども把握した上で乗れますもんね。
坂井 その分、WASJでは対応力と言うか、どれだけ臨機応変に乗れるかが大事になるんじゃないかなと思っています。
──初出場のWASJへ意気込みをお願いします。
坂井 初出場になりますけど、出るからには優勝を目指して頑張りたいですし、ファンのみなさんが楽しんでもらえるようなレースができたらなと思っています。応援よろしくお願いします。
▲「応援よろしくお願いします」(撮影:下野雄規)
(文中敬称略)