人気薄ながら逃げ粘ったシナモンスティック 血統背景が示す潜在的な馬場適性
血統で振り返る新潟2歳S
【Pick Up】アスコリピチェーノ:1着
道中は中団に構え、直線で外に持ち出すと、逃げ粘るショウナンマヌエラをゴール前でとらえました。
父ダイワメジャーは2歳戦の強さに定評がある種牡馬で、2015年にはディープインパクトを抑えて2歳種牡馬ランキングのトップに立ちました。
母アスコルティはタッチングスピーチ(ローズS)、サトノルークス(菊花賞2着)などの半姉で、2代母リッスンはサドラーズウェルズの娘。母方にサドラーズウェルズを持つダイワメジャー産駒は成功しており、これまでJRAの2歳GIを制したメジャーエンブレム、アドマイヤマーズ、レシステンシアの3頭は、すべてこのパターンから誕生しています。
ダイワメジャー産駒の2歳牝馬にはもう1頭、ボンドガールという大物候補がいますが、実績面ではアスコリピチェーノが一歩リードしました。2歳GIを獲ってもおかしくない配合構成の持ち主なので、今後のさらなる成長が期待されます。
血統で振り返るキーンランドC
【Pick Up】シナモンスティック:2着
8番人気ながら2着に逃げ粘りました。7月以降3戦目で、それでも使い減りするどころか自己最高馬体重を更新。よほど体調がいいのでしょう。デビュー戦から34kgも成長しています。
函館2歳Sを勝ったリンゴアメ(父マツリダゴッホ)の半妹。父ジョーカプチーノは、その父マンハッタンカフェとは似ても似つかないスピード型で、洋芝向きの特長を備えています。
3代母メイワキミコは、不良馬場の皐月賞を制したハワイアンイメージの半姉にあたる良血で、スプリンターズSを2回制し、現役生活を通じて3回レコード勝ちを果たしました。ギャラントマンを父に持つ持込馬だけあってパワーにも秀でており、1977年に中山ダ1200mで樹立した1分09秒2というレコードタイムは21年間破られませんでした。
シナモンスティックは、3勝クラスまで出世したマイネサヴァラン(父マンハッタンカフェ)の4分の3妹でもあります。同馬は不良馬場で2、3着となった経験がある道悪巧者。シナモンスティックは前走までの18戦、すべて良馬場でしたが、潜在的な道悪適性が高かったということでしょう。
知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【ヘイロー】
現役時代にアメリカで芝G1を勝ったものの、ダート競馬が主体のアメリカでは目立つ存在ではありませんでした。ただ、その当時売り出し中だったノーザンダンサーの従兄弟にあたる良血だったこともあり、種牡馬として成功。1983、89年の二度、北米チャンピオンサイアーの座についています。エキセントリックな気性、アメリカ馬らしくない細身の馬体は、その父ヘイルトゥリーズン譲り。サンデーサイレンスを筆頭に、グッバイヘイロー、サザンヘイロー、グローリアスソング、その全弟デヴィルズバッグなど、多くの一流馬を出しました。芝・ダート兼用の中距離向きスピードが持ち味で、激しい気性を伝えます。サンデーサイレンスを経ないヘイロー系はパワフルなタイプも珍しくありませんが、サンデー系は芝向きがほとんど。たとえば、サンデーを介したヘイローのクロスは日本向きのスピードや素軽さを表現しやすい配合パターンです。
血統に関する疑問にズバリ回答!
「なぜ非根幹距離が得意な種牡馬がいるの?」
根幹距離とは400mで割り切れる距離、非根幹距離は割り切れない距離のことです。1400m、1800m、2200mなどは非根幹距離です。GIレースは根幹距離で行われることが多く、非根幹距離のGIは、2500mの有馬記念をはじめ5レースしかありません。
個人的に、根幹距離・非根幹距離という概念を、自分の血統論に持ち込んだことはありません。かなりザックリとしたとらえ方ではありますが、非根幹距離は小回りコースや癖のあるコースに設定されていることが多いので、たとえばスピードの持続力や器用さを武器とするタイプはそうした条件を得意とするでしょう。ダイワメジャーなどは、芝1200m、芝1600m、芝2000mよりも、芝1400m、芝1800mのほうが連対率が優れています。ただ、こうした種牡馬であっても、たとえばサドラーズウェルズを入れて底力を強化すれば、マイル戦の大舞台でも十分戦えます。父だけで判断するのではなく、配合全体を眺めて適性を見極めることが重要でしょう。