スマートフォン版へ

アスクワンタイムが小倉2歳Sを制覇 血統背景が示す抜群のコース適性

  • 2023年09月04日(月) 18時00分

血統で振り返る札幌2歳S


【Pick Up】セットアップ:1着

 ダッシュを利かせてハナに立ったセットアップがマイペースに持ち込み、パワーホール以下の追撃を寄せ付けず逃げ切りました。土曜日の札幌芝は、7レース中6レースで逃げ馬が連対したように前が止まらない馬場でしたが、後続につけた4馬身差は、2021年のジオグリフと並ぶレース史上最大着差です(現行条件となった1997年以降)。

 母スリーアローは3勝クラスまで出世しました。初仔のリーゼノアール(父エピファネイア)は、2021年のセレクションセールで6000万円(税抜)の最高価格をつけ、2番仔の本馬も翌年の同セールで4200万円(税抜)の高値がつきました。デクラレーションオブウォー産駒のセリ売買馬としては歴代3位の高馬であり、1歳時から目を惹く好馬体だったことが伺えます。

 2代父ウォーフロントは、スピードの持続力が持ち味で、他にアメリカンペイトリオット、ザファクターなどがわが国で供用されています。デクラレーションオブウォー産駒の出世頭トップナイフは、昨年のホープフルSで2着と逃げ粘り、今年の札幌記念では9番人気ながら2着と健闘しました。アメリカンペイトリオット産駒のビーアストニッシドはスプリングSを逃げ切っています。セットアップのレースぶりは、先に行って粘り強い、というこの系統の良さを最大限に活かしたものでした。

血統で振り返る小倉2歳S


【Pick Up】アスクワンタイム:1着

 後方に控えたアスクワンタイムが直線大外を強襲して差し切りました。1〜4番人気は新馬戦を勝ったばかりの馬が占めていましたが、5番人気の本馬は、中京の新馬戦(芝1200m)で2着に敗れ、同コースの未勝利戦(芝1200m)を5馬身差で楽勝したあと、ここに臨んでいました。

 ファンタジスト(京王杯2歳S、小倉2歳S)、ボンボヤージ(北九州記念)の全弟。全きょうだい3頭がいずれも小倉コースで重賞を勝っているのですから抜群の適性です。きょうだいは小倉芝コースで15戦7勝、そのうち3勝が重賞です。

「ロードカナロア×ディープインパクト」の組み合わせは、馬体のサイズが小さめに出るのがネックで、本馬も現時点で438kgしかありません。現役生活を通じ、ファンタジストは44kg、ボンボヤージは30kgも馬体重が増えたので、本馬もこれから成長し、非力な面は解消されていくでしょう。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬


【ミスタープロスペクター】

 アメリカ史上最強馬の一頭と評価される米三冠馬セクレタリアトと同じく1970年に誕生し、現役時代は重賞で2着2回、3着1回という成績。しかし、種牡馬としてはセクレタリアトをはるかに上回る成功を収めました。

 最大の武器はスピード。時計勝負に強く、産駒はアメリカのダートだけでなくヨーロッパの芝でも次々とビッグレースを制覇しました。ダッシュを利かせて先行するレースができる一方、折り合いがつけば終いに鋭い脚も使えるタイプで、2〜3歳戦で本領を発揮しました。この血が入ると素軽さが増すため、たとえばサドラーズウェルズのような重厚な血には、ミスタープロスペクターを併せ持つ配合パターンが有効です。

 すでに誕生から半世紀以上が経過し、代を経ることで直系子孫は距離をこなすものが主流となりつつあります。北米ではファピアノを、ヨーロッパではドバウィを経たラインが活発に系統を伸ばしており、日本ではキングカメハメハ系がサンデーサイレンス系に対抗する一大勢力となっています。

血統に関する疑問にズバリ回答!


「雨が降ると成績が向上する種牡馬は?」

 芝・ダートを問わず、雨が降って馬場コンディションが悪化すると成績が向上する種牡馬はミッキーアイルです。

 芝・ダートそれぞれの馬場コンディション別連対率は以下のとおり。

【芝】
 良・稍重=17.1%
 重・不良=23.7%
【ダート】
 良・稍重=18.1%
 重・不良=23.4%

 芝もダートも、馬場コンディションが悪化すると明らかにパフォーマンスが上がります。これから秋雨前線が活発化し、雨模様の開催が増えるはず。ミッキーアイルは狙って損のない種牡馬といえるでしょう。

 ちなみに、これと真逆の傾向を示すのがヘニーヒューズとドレフォン。芝・ダートを問わず乾いた馬場コンディションのほうが走るタイプです。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング