理想の好位追走に隙なしの完璧な内容だった
セントライト記念を制したレーベンスティール(撮影:下野雄規)
菊花賞に向けたトライアル(前哨戦)とはいえ、まだ完成途上の3歳馬同士の一戦。大きな展望を持つ期待馬ほど、ここで結果が求められていた。そこで仕上がりに疑問のある馬はほとんどいなかった。
有力馬の中では、2番人気レーベンスティール(父リアルスティール)は、まだクラス分け賞金900万の条件馬。ここで結果を出さなければ菊花賞の優先出走権はもちろん、悪くすれば2勝クラスから出直し。他の路線を選ぶにしても重賞に出走できる条件賞金ではない。
必勝を期してJ.モレイラ騎手を配し、文句なしの素晴らしい仕上げだった。レース内容も、理想の好位追走になっただけでなく、さすがはモレイラ、まったく隙なしの完璧な内容だった。
レース全体の流れは前後半「60秒1-(12秒5)-58秒8」=2分11秒4。落ち着いた流れになったため、有力馬の中でもっとも無理することなく好位のイン追走から、最後は馬群の外に出してスムーズに加速する形になった。2分11秒4は最近10年では最速。文句なしの完勝だった。
タイプとすれば、血統背景からも中距離向きと思える。レース直後は陣営も菊花賞挑戦を明言していないので、このあとの路線は未定。他の同じ陣営の有力馬の動向を見つつの路線決定となると思える。
皐月賞馬ソールオリエンス(父キタサンブラック)は、互角以上の好スタートを切って、日本ダービー時より余裕を感じさせながらの中団馬群の後方追走。差し=追い込みタイプの春の2冠「1着、2着」馬らしい自信を持った追走で、馬群に入ることなく大事に終始外を回る形になり、4コーナー手前からも一番外に回った。
レーベンスティールが必勝態勢のレースを展開したのに対し、結果2着にとどまったからではないが、こちらは大一番に向けての前哨戦らしいレースだった。
菊花賞挑戦は早くからの既定路線であり、位置取りとスパートのタイミング、さらには通ったコースの差で2馬身近い差が生じたが、次に菊花賞を決めている馬としては十分合格だろう。
記録は完敗でも、ゴール寸前のストライドはさすがだった。上がり3ハロン34秒0は勝ち馬の33秒9に見劣るが、通ったコースを考えれば互角かそれ以上だろう。
3着シャザーン(父ロードカナロア)は、勝ったレーベンスティールと終始前後する位置取り。レース全体の流れを振り返れば、強気なスパートは前日のローズSを勝った同じ岩田望来騎手のマスクトディーヴァと同じようなタイミングだったが、1、2着馬には切れ味負け、迫力負けの印象もあり、見事に優先出走権を獲得したが、菊花賞3000mに手応えを感じさせたというほどの内容ではなかったか。
4着セブンマジシャン(父ジャスタウェイ)は、まだ2勝クラスとすれば上々の内容であり、確かな成長力をみせた。この相手に通用したのだから、2勝クラスはたちまち突破できる。
5着キングズレイン(父ルーラーシップ)は、多頭数の内枠を気にしたのかスタートでダッシュがつかず、最後方追走となってしまった。
3コーナーからインをついて動いたが、レース後半が58秒台、レース上がり34秒4の後半勝負。さらには全体時計の速い決着。馬群をさばいて5着に突っ込んだので力負けとはいえず、不完全燃焼だった。
ソールオリエンスと同じ手塚厩舎。賞金額から菊花賞挑戦は可能。ステイヤーかどうかは難しいが、2019年の菊花賞でワールドプレミアの小差2着に突っ込んだサトノルークス(父ディープインパクト)は、母タッチングスピーチの全弟にあたる。