まだ上積みが見込める
オールカマーを制したローシャムパーク(撮影:下野雄規)
先手を取ってマイペースに持ち込んだ1番人気のタイトルホルダー(父ドゥラメンテ)を射程に入れ、途中から積極的に好位を確保した4歳の上がり馬ローシャムパーク(父ハービンジャー)の快勝だった。
GIIの別定重量戦をこの夏の上昇4歳馬が1着、3着したことにより、皐月賞馬と日本ダービー馬の対決となる菊花賞、牝馬3冠がかかるリバティアイランドの秋華賞と同じように、古馬の秋のビッグレースも一段と盛り上がること必至となった。
ローシャムパークはこれで3連勝。GI3勝馬タイトルホルダー、GI馬ジェラルディーナ(父モーリス)を倒したのだから評価は一気に上がる。レース前のパドックでは、歴戦の古馬のエース級に少しも見劣ることなく、おっとり見えるほど落ち着いていた。平然と周回していたあたり、精神面でも明らかに成長している。ここまでは体質もあり、休ませながら大事に出走してきたが、今回は函館記念からあまりレース間隔を空けた出走ではなく、体質も強化されている。まだ上積みが見込めるはずだ。
レースの流れは「前半61秒1-(12秒4)-後半58秒5」=2分12秒0(上がり35秒5)。少々接近はされてもタイトルホルダーには少しも厳しい流れではなく、絶好調時ならあのまま押し切っても不思議ないペースだった。簡単に失速した昨年の有馬記念、競走中止となった天皇賞(春)よりは明らかに気配は良く、毛ヅヤも上々だったが、さすがにまだ完調には一歩手前。9分程度の仕上がりだったろう。それでも最後まで粘ったのは底力。順調さを取り戻したのでこのあとは完全復活が期待できる。
3着にとどまったとはいえ、4歳の上がり馬ゼッフィーロ(父ディープインパクト)のパワーアップも見事だった。キャリアの差か、必ずしもスムーズとはいえない道中の追走で、直線は巧みにスペースを選んだものの詰まり気味になる残念なシーンもあった。それでも最後にタイトルホルダーを交わそうとする伸び脚をみせた。上がり34秒7は最速。これで5戦連続して上がり3ハロン最速であり、さらには一戦ごとに相手が強化しながら8戦連続0秒2差以内の接戦。必ずしも見栄えのする力強い馬体ではないが、ディープインパクトから無駄のない体型を受け継いでいるからではないかと思える。
3番人気のジェラルディーナは少し差のある6着だったが、勝負どころでスムーズにスパート態勢に入れなかった。これまでも牝馬ながら間隔が空くと反応の鈍い面があり、ゴール寸前の勢いから明らかに脚を余している。しかし、チャカチャカしてもともとスタートで後手を引くことも多く、テン乗りになった団野騎手のミスではない。馬場差やペースはともかく、走破時計の2分12秒5は昨年を上回り、自身の上がり35秒1は勝った昨年とまったく同じだった。能力全開はこの後のエリザベス女王杯だろう。
4着マリアエレーナ(父クロフネ)は、この相手に0秒2差(10番人気)は上がりの速いレースで全能力発揮に成功したと結果と思える。初コースが死角だったが、器用さこそがモノをいうことも珍しくない中山コースが実際には合っていた。
逆に、2番人気で一旦は先頭に立ちかける脚を見せたガイアフォース(父キタサンブラック)は、昨秋のセントライト記念を勝ってはいるものの、それほど器用に立ち回れるタイプではない。今回は勝負どころから外に回ったが、手前の関係なのかロスがあった気がする。さまざまな距離を使いながら、まだ今回が10戦目。天皇賞(秋)を展望しているが、東京の2000mは合っている可能性が高い。