スマートフォン版へ

【スプリンターズS】あの「ハナ差」を生んだ緻密で濃密な68秒間を振り返る【月刊 川田将雅】

  • 2023年10月05日(木) 18時01分
“VOICE”

▲“ソダシの妹”ママコチャをハナ差でGI勝利に導いた(撮影:下野雄規)


ゴール前で大接戦となった先週のスプリンターズSを制したのは、川田騎手との初コンビとなったママコチャでした。

ゴールの瞬間は坂井瑠星騎手騎乗の2着馬マッドクールと馬体を完全に合わせる形になりましたが、勝利を確信していたそう。

“勝ち切るため”の緻密な組み立てと、瞬時の判断で選択した最善の策──。68秒間を超越した思考に迫りました。

(取材・構成=不破由妃子)

4コーナー先頭の形になったのは“最善の策”だと思ったから


──スプリンターズSは写真判定の末、ハナ差でママコチャが勝利。スタートからゴールまで、見事なエスコートでした。

川田 よく頑張ってくれましたね。

──ゴールした瞬間は、やはりどちらが勝ったのかわからなかった?

川田 いえ、僕も瑠星もわかってましたよ。ゴールした瞬間、勝ったなと思うと同時に、瑠星の「あー!」っていう悔しそうな声が聞こえてきましたしね。その後、馬を止めているときに、改めて瑠星が「負けましたよね?」と聞いてきたので、「うん。俺が勝ってると思うよ」と答えて。

“VOICE”

▲ゴールの瞬間に勝利を確信していた(撮影:下野雄規)


──前日の阪神7Rも同じようなゴールシーンで(川田騎手騎乗のウインルーティンがハナ差の勝利)、スプリンターズSもそうですが、一瞬、2着馬のほうが突き抜けるかの勢いがあった。でもそうはさせなかったということは、馬の頑張り以外にも、なにか川田流の技があったり?

川田 もちろんありますよ。もうひと踏ん張りさせることも必要ですし、ゴールを通過する瞬間の馬の体勢もとても大事です。馬が首を振り上げた瞬間にゴールを迎えてしまうのが一番不利な体勢、逆に首を伸ばし切ったタイミングでゴールを迎えるのが一番有利な体勢ですよね。そのタイミングをゴール板に合わせたりなど、まぁいろいろあります。

──そのタイミングって、あのスピードのなかでコントロールできるものなんですか?

川田 できるだけ合わせるようにすることはできる。ただ、僕の感覚的なものになってくるので、それを言葉で伝えるのはとても難しいです。こうすればこうなります、というものではないですし、馬によってやり方も違う。はっきりと「こうです」とは説明しづらい。

──でも、確実に計っていると。

川田 計ってます。当たり前ですが、計って合わせたところですべて勝ち切れるわけではありません。競馬ですからね。ただ、レース中に細かくいろいろなことを積み重ねてきていれば、ゴール前の数完歩で何をやるかによって差は生まれるし、着順も変わる。だからあの瞬間も、勝たせるために最善を尽くしているということです。

“VOICE”

▲ゴール前でも川田流の技を繰り出した(撮影:下野雄規)


──順番が逆になってしまいましたが、改めてスタートから。ポンというよりスーッと出て行く感じの美しいスタートでしたね。

川田 今回のレースを勝ち切るためには

続きはプレミアムサービス登録でご覧になれます。

登録済みの方はこちらからログイン

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング