乗馬クラブから鹿児島へ旅立つマイティと笑顔で記念撮影(提供:Mさん)
旋回癖のあるマイティにぴったりの場所は…
競走馬を引退したマイティドリームは、乗馬としてのセカンドキャリアをスタートさせていた。前出のYさんやHさんをはじめとしてマイティドリームを長らく気にかけていた人々は、彼が乗馬になっていたことに喜び、安堵した。
マイティドリームはやがてタカラハニーの隣の馬房に移動してきた(タカラハニーは、ハニーズサークルというタカラハニーを支援する会の会員によって支えられている)。それもあってハニーズサークルの発起人代表のMさんは、マイティドリームの写真もよく撮影し、マイティドリームを気にかけている人たちと共有した。Mさんによるとマイティドリームは俺様気質な性格で、タカラハニーとは馬房越しにお互い耳を絞ってよくやり合っていたという。喧嘩するほど仲が良いのかどうかわからないが、おそらくそれも2頭の楽しみだったのではないかとも思う。
だがマイティドリームには旋回癖があった。旋回癖とは、馬房内で円を描くようにグルグル回る動作を繰り返すことだ。旋回することで蹄鉄がすり減って鋭くなり、自らの脚を傷つけたり、外傷などのトラブルが絶えなかった。さらには前述したように俺様的な性格で、限られた人しか乗ることができなかった。こうなるとクラブとしても会有馬として置いておくのが厳しくなってきて、次の行き先を探す可能性も高くなってくる。
乗馬クラブでのマイティドリーム(提供:Mさん)
これは一般論だが、馬を1頭養うのには当然のことながらお金がかかる。ケガや病気をすれば治療費もかかる。ケガが絶えず、お客を乗せることがなかなかできないとなれば、クラブの経営を圧迫することになる。結果としてその馬をクラブから出すという苦渋の決断をせざるを得ないケースもあると聞く。乗馬クラブはボランティアで運営しているわけではないし、これは致し方ない判断だと言えよう。ただそれぞれの馬に合った行き先をなるべく探して送り出しているクラブも多いようだ。
マイティドリームについても、旋回癖という難点はあるものの、クラブ側はマイティドリームに合った場所はないものかと模索していたに違いない。一方マイティドリームを気にかけてきた10名近い有志が集まり、いざという時に引き取れるよう準備を始めていた。その中にはHさん、現在マイティドリームの会の発起人代表を務めるAさん、ハニーズサークルの発起人代表のMさんもいた。
クラブ側にはマイティドリームの次の行き先を探す段階になったら、引き取りを計画しているのでこちらにも声をかけてほしいと頼んだ。
そしてついに集まった有志たちが、マイティドリームを引き取ることが決まった。マイティドリームの預託先については、有志それぞれが真剣に意見を出し合った。そのどれもがマイティドリーム愛に溢れたものだった。最終的に馬房内で旋回してしまう彼には24時間放牧地で過ごせる場所が良いのではないかと意見がまとまり、鹿児島県のホーストラストに預託することが決まった。
マイティのことを第一に“24時間放牧地で過ごせる場所で”(提供:Mさん)
一方マイティドリームをデビューから追いかけ続けたYさんは、経済的事情からその時は支援には加わらず、Aさんを通して情報を得ながら陰からうまくいくよう祈り、応援していた。そしていつの日か支援の輪に加わると決めていた。
いよいよ鹿児島へと出発の日。Hさんをはじめとした有志数人が見送りにきた。マイティドリームを担当していた乗馬クラブのスタッフは「まるで大当たりの宝くじに当たったようだ」と、とても喜んだ。スタッフもまたマイティドリームを愛していた。
見送りに集まった皆が笑顔で写真に収まり、Hさんがプレゼントした無口をつけたマイティドリームは、鹿児島へと旅立っていった。
Hさんがプレゼントした無口をつけたマイティドリーム(提供:Mさん)
(つづく)
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