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【サトノグランツ×大江祐輔助手】“チームマカヒキ”の不思議な縁──ライバルだったサトノダイヤモンドの仔と菊花賞へ!

  • 2023年10月15日(日) 18時02分
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▲菊花賞に出走予定のサトノグランツと担当の大江祐輔助手(撮影:大恵陽子)


馬群の中から抜け出したマカヒキと、それを目がけて外から伸びたサトノダイヤモンド。2頭はピタリと馬体を併せたままゴールを駆け抜け、写真判定の末、わずか8cm差でマカヒキが2016年日本ダービー馬に輝きました。

あれから6年経った昨秋。マカヒキの引退と入れ替わるように友道康夫厩舎に入厩してきた2歳馬は、父にライバル・サトノダイヤモンドを持つサトノグランツでした。

奇しくも担当はマカヒキと同じ大江祐輔調教助手に決まると、先月の神戸新聞杯をレコード勝ち。父の軌跡を辿るように菊花賞でGI初制覇を目指します。

父のライバルだったからこそ感じるサトノグランツの良さや父譲りの才能とは。菊花賞に向けて大江調教助手に伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

「マカヒキと併せ馬ができていれば」夢のシチュエーション


──まずは最初の頃の印象から教えてください。

大江 デビュー前から調教の動きが良くて、体も十分使えていたので期待の一頭でした。ですが、いざデビュー戦になると予想以上にエンジンがかかるのが遅いな、という印象でした。

──それもあって新馬戦は8着。しかし、デビュー3戦目で初勝利を手にすると、3連勝で京都新聞杯も制して素質馬らしい活躍を見せます。前走の神戸新聞杯も勝って重賞2勝目。最後の最後にグイッと伸びてきましたね。

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▲重賞2勝目となった神戸新聞杯(C)netkeiba.com


大江 前半がそんなに速くない流れの中でレコードタイムが出たということは、いかに後半が速かったかということだと思います。ラスト2ハロン目と3ハロン目は10秒台なので、サトノグランツが伸びていないわけじゃなくて、みんながものすごく速いラップを刻む中で辛抱強くついて行って、なおかつ最後まで伸び続けて勝ちきったレース。成長を感じる内容で、価値あるレースだったと思います。

──大江調教助手はマカヒキを担当されていて、日本ダービーで写真判定の大接戦を演じた2着サトノダイヤモンドの産駒がサトノグランツです。ライバルの子どもと重賞制覇というのも不思議なものですね。

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▲サトノグランツの父はサトノダイヤモンド。大江助手が担当したマカヒキと日本ダービーで大接戦を演じた(撮影:下野雄規)


大江 不思議な縁を感じますし、競馬って面白いなと思います。サトノグランツのことはセレクトセールで見ていて、里見オーナーが買われて「もしかしたら友道厩舎に来る可能性もあるのかな」と思っていました。


──マカヒキの引退が発表されたのが昨年10月。サトノグランツのデビューも同月なので、もしかして2頭は厩舎で顔を合わせたことがありましたか?

大江 いえ、マカヒキは8月の札幌記念が最後のレースだったので、ちょうど入れ替わりでした。もし同時期に在厩していれば、併せ馬をしたり、調教でマカヒキにリードしてもらうとか、そんなシチュエーションがあれば最高でしたね。

サトノダイヤモンドの血「長距離適性と成長力が共通している」


──ライバルという立場からサトノダイヤモンドのことはよく見ていたのではないかなと思うのですが、どんな印象の馬でしたか?

大江 若い頃からトモの動きがものすごく特徴的でした。特に常歩ではトモの送り方が大きく振り込んでいて、それでいて背中もすごく使っていたので、あのパフォーマンスに繋がったのかなと思います。体も柔らかかった印象です。

──息子のサトノグランツは似ているところはありますか?

大江 常歩はまたちょっと違いますが、フットワークの大きさは似ているんじゃないかなと思います。あとはやっぱり長い距離に対しての適応力ですね。サトノダイヤモンドは早い時期からも走りましたけど、秋になって菊花賞でしっかり勝ったように、成長力も共通していると思います。

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▲父・サトノダイヤモンドは菊花賞でGI初制覇(C)netkeiba.com


──成長力を受け継いでいるというのは、これから先も楽しみが広がります。日本ダービーの「ゆるい出馬表」ではサトノグランツのことを「人懐っこくて、顔をワシャワシャってされるのが好き」と言っていましたが、それは秋を迎えても変わらずですか?

大江 日本ダービーの後は北海道に戻って、牧場での過ごし方も良かったようで、心身ともにものすごくフレッシュな状態になって帰ってきました。キャラクターは変わらず素直で本当に可愛いです。

「サトノグランツは顔をワシャワシャされるのが好き!?」日本ダービーゆるい出馬表を見る
──マカヒキは秋は凱旋門賞に向かいましたが、サトノダイヤモンドは神戸新聞杯から菊花賞と連勝しました。サトノグランツにも続いてほしいです。

大江 サトノダイヤモンドの子どもで菊花賞に向かうこと、それにジョッキーはマカヒキのパートナーとして一緒に鎬を削った川田将雅騎手。いろんな縁が折り重なって菊花賞に向かうっていうのは本当に競馬は面白いし、様々な縁があるなと思います。

──サトノグランツはエンジンのかかりがゆっくりなタイプとなると、3000mの菊花賞の舞台はより力を発揮できるのでは、と期待が高まります。

大江 長い距離に向いていると思います。気性的にも割と穏やかですし、大きなフットワークもいいと思います。

──改めて、菊花賞へ向けて意気込みをお願いします。

大江 サトノグランツは上半期・下半期でここまで重賞を2つ勝ってくれ、牧場と一体になって菊花賞を目標にしてきました。いい夏を過ごして、秋初戦もいいパフォーマンスを見せてくれました。馬はまだ成長中ですので、さらにもう一つ状態を上げて本番を迎えられるように厩舎一丸となって頑張っています。僕たちも楽しみにしていますし、応援よろしくお願いします。

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▲「牧場と一体になって菊花賞を目標にしてきた」と大江助手(撮影:大恵陽子)


(文中敬称略)

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