▲リバティアイランドと牝馬三冠を達成した胸中に迫る(撮影:桂伸也)
10月15日に京都競馬場で行われた秋華賞を制し、史上7頭目の牝馬三冠を達成したリバティアイランド。その背中にいたのは川田将雅騎手でした。
これまでにも数多くの名馬とともにいくつものビッグレースを制してきた川田騎手ですが、これまでとは違う“圧倒的な責任の重さ”と“心からの感動”があったそう──。
「ディープインパクトのような競馬をしようと思った」というレース回顧、たくさんの仲間からの祝福が記録されていたジョッキーカメラの真相、レース後の中内田調教師との知られざるやりとりなど、じっくりとお聞きしました。
(取材・構成=不破由妃子)
スターホースの存在を前に──見る側から初めて乗る側になった感動
──史上7頭目の牝馬三冠達成、おめでとうございます。
川田 ありがとうございます。
──いつもとは違う川田さんがそこにはいましたね。さすがに初めて味わう感情があったんだろうなって。
川田 本当に心から感動しました。ドバイWCを勝ったときとも、ブリーダーズカップを勝ったときとも、また違った心への響き方でしたね。
──その感動の一番の源は?
川田 う〜ん…。競馬の本質に触れたという想いですかね。
──ここでいう競馬の本質とは?
川田 スターホースがいて、その走りを多くの競馬ファンが心から楽しむ、それが競馬。今回の秋華賞を無事に走り終えて戻ってきたときのスタンドの雰囲気から、そう感じたんです。スターホースといわれる馬が存在したとき、今までの僕は彼らを見る側であり、そこに参加している側のひとりだったわけで。
──アーモンドアイだったり、コントレイルだったり。
川田 アーモンドアイなんて、完全に負けて引き立てる側。なにしろ彼女がGIを勝ったとき、僕はすべて異なる馬で2着を4回経験していますから。でも、今回は初めてスターホースに乗る側になった。
しかも、デビューから手綱をとり続けている馬であり、その走りを楽しみにしてくれているたくさんのお客さんがいて、三冠を達成したことでみなさんが喜んでくれて、関係者は安堵し、喜び…。やはりスターホースがいて、その走りを楽しむというのが競馬の醍醐味だと感じたんです。
今回、リバティの背中から、初めてスターホース側からの光景を見た。そのときに、競馬の本質に触れたんじゃないかと思えたからこそ、心から感動したんだと思います。
──その背中にいてこそですものね。川田さんにとっても初めての三冠チャレンジだったわけですが、レース前の心境には何か変化がありました?
川田 心境の変化については、自分自身にどういう変化が起こるのか、個人的にとても興味深いところでした。ですが、基本的にはいつも通りだった。この子との時間のすべてが特別なものなので、いつもと変わらないと言えば変わらないのですが、今まで以上の圧倒的な責任の重さ、重圧はもちろん感じました。でも、いつも通り、単純な緊張を感じる瞬間はなかったです。
──重圧とは、ハープスターのときに感じたものとは違うもの?
川田 違いますね。絶対に勝たなければいけないという意味だけなら同じですが、今回は三冠が懸かっていたレース。勝たなければいけないという重みが違います。そして、もう若くはないですからね、僕も。たとえばうまくレースを作れなかったとして、「僕の経験が足りなかった。申し訳ありません」なんて、まったく許されることじゃないですから。
▲“三冠”には今まで以上の圧倒的な責任の重さが(撮影:桂伸也)
レース前はあえて何も考えず──3コーナーから「ディープのような競馬をしよう」と
──確かに。さっそくレースについて伺います。3枠6番と聞いて、まず何を思いましたか?