▲2009年の朝日杯FSを制したローズキングダムと小牧騎手(撮影:下野雄規)
土曜日の中京3Rに出走したグレアミラージュは、10番人気という評価のなか、直線でしぶとく脚を伸ばして掲示板を確保。後方の内からロスなくポジションを上げてくる小牧騎手の好騎乗が光りました。「5着に入って権利が取れたのは大きい。1400mならチャンスがありそう」と小牧騎手。次走に期待です!
ユーザーからは「人生にまつわる」質問がふたつ。「もしタイムマシーンがあったら…」という質問に、はたして小牧騎手の答えは!?
(取材・文=不破由妃子)
タイムマシーンがあったとしても過去には戻りたくない、今が一番!
──土曜中京3R(3歳上1勝クラス・ダ1400m)のグレアミラージュは5着。馬も頑張りましたが、小牧さんの騎乗ぶりに唸りました。こういう競馬がしたいという明確な意思が見えて。
小牧 そう? スタートは出たんやけど、なんせ内に入りたくてね。相変わらず口向きの悪さはあるけど、上手いこと内に付けられましたわ。
──道中は後方の内を進み、コーナーを使ってロスなくポジションを上げて。直線もジワジワと外目に誘導して、しっかり脚を使いましたね。
小牧 3着くらいあるんかなと思ったけど、最後はやっぱり同じ脚になってしまった。逆にかわされるんちゃうかと思ったよ。まぁよく踏ん張ってくれました。本音を言えば、勝たせてよーっていう感じやけどね(笑)。
──掲示板に乗った馬は、小牧さん以外全員減量ジョッキーで、上から53キロ、55キロ、56キロ、55キロ。そのなかでグレアミラージュは58キロですからね。やはり力はあるなと。
小牧 そうやねんな。乗り難しい馬やけど、意外とコンスタントに走ってくれてるわ。5着に入って権利(優先出走権)が取れたし、次はちゃんと狙ったところを使えるね。今、乗せてもらっているなかで、確実に権利を取れる馬は少ないから、これは大きいよ。僕としても、これで確実に1頭、乗り馬確保や。
──グレアミラージュは、もう絶対に小牧さんじゃないと。
小牧 難しいからねぇ。いろんな距離を試してきたけど、やっぱり1400mがいいね。1400mならチャンスがありそうやわ。
──さて、今週ですが、ワンダーブレットが12月9日の赤穂特別に登録していますね。
小牧 入るかどうかわからんけど、調教では変わりなく順調やからね。でも、前走の走りを見ると、やっぱり夏場のほうがいいんかなぁと思ったり。まぁこの馬についてもどういう競馬が向いているのかわかっているから、もし上手いこと入ったら頑張るだけや。
──では、ユーザーからの質問をふたつほど。「くだらない質問で申し訳ありません。もしタイムマシーンに乗れるとしたら、何歳の頃に戻って、何をやり直したいですか?」。
小牧 戻りたくないね。今が一番いいわ。これまでしんどかったから、いろいろね。
──ジョッキーとして、もう一度あの時代から…みたいな思いはありませんか?
小牧 もう十分やってきたからなぁ。いろんなことを経験してきたし、どの時代も一生懸命乗ってきた。もちろん今も一生懸命に乗ってる。今もまだもがいているけど、それは周りのみんなの「頑張って」という気持ちに何とかして応えたい一心で、何よりそれが最大のモチベーションやから。僕自身は1年1年、常にやり切った感はあるよ。必死に頑張ってきたし、頑張ってるもん。今さら昔に戻って、あんな思いもしたくないし(笑)。
──あんな思いとは?
小牧 まぁいろいろ…。たくさん乗ってたら乗ってたで、けっこうしんどかったよ。地方時代からずーっとプレッシャーもあったしね。スポーツ選手はみんなそうでしょ。ケガもあったし、1年1年の戦いやから。これ以上、あれをやりたい、これをやりたいっていうのはないわ。相変わらずトレーニングは頑張っているけど、これ以上何かを望むというより、維持が目的やしね。
──当たり前なのかもしれませんが、小牧さん、トレーニングや減量は絶対に手を抜きませんよね。
小牧 そこはね。騎乗馬が58キロ1頭だとしても、いつも通り絞る。浮腫んだ体では絶対に乗りたくないし、それ以前に動かへんから、身体が。
──では、続いての質問です。「もう30代の半ばになるのに、いつも「何か違う…」という気持ちになり、仕事が長続きせずに悩んでいます。こんな僕に何かアドバイスをください!」。
小牧 自分に合う仕事に巡り合えてないからちゃう? どんな仕事であっても、やっぱり何かひとつでも楽しいことがないと長続きしないよ、絶対。僕だって、騎手という仕事がおもしろいから長続きしているだけで。しんどくて嫌だなぁと思いながらでは、誰しも絶対に長続きせんわ。
──楽しいと思える仕事に出会えることが一番ですが、自分で楽しみを見つけることも大事ですよね。
小牧 そうそう。今はどこも人手不足やからね。まだ若いんやし、選択肢があるうちにいろいろチャレンジしてみればいいんじゃない?
(文中敬称略)