▲今年の初戦、日経賞を1.3秒差で圧勝したタイトルホルダー(撮影:下野雄規)
長所が正反対「スルーセブンシーズvsジャスティンパレス」宝塚記念同様に前者有利か
菊花賞で約0.1秒差の3着となり今年の阪神大賞典と天皇賞(春)を連勝したジャスティンパレスは現役馬の中でも有数のステイヤーという地位を築きましたが、イクイノックスが大レコードをマークした天皇賞(秋)でも約0.4秒差の2着と激走。実に素晴らしい走りを披露したのは間違いありません。
その天皇賞(秋)でのジャスティンパレスの前後半のラップタイムは59.45-56.15。後傾率の高い値に見えますが、実態はそれほどでもないのです。同レース上位4頭の平均ストライド長(1完歩ごとに進む距離。グラフの値が上になるほど歩幅が大きいことを表す)の推移を見ていきましょう。
▲ゴールまで他馬よりも大きな歩幅のまま走り切ったジャスティンパレス(白)(作成:Mahmoud)
道中後方から2番手を進んでいたジャスティンパレスは残り800m辺りから最後方にいたプログノーシスに外から並び掛けられ4コーナーをクリアするまでインに閉じ込められる格好となりました。
この4頭の中で最もストライドを伸ばして走るのがジャスティンパレスですが、インに閉じ込められていたL800〜600m区間ではストライド長の値がダノンベルーガと逆転する他、プログノーシスとも差が僅かに少なくなっています。
この天皇賞(秋)はイクイノックスの暴力的な走りにつられた馬がほとんどでしたが、ジャスティンパレスだけはラストスパート始動のタイミングが遅く、しかもその始動が緩やかであったためゴールまで脚色が衰えなかったという側面がありました。
また、ストライドの大きいジャスティンパレスが4コーナーのインで無理をせずにコーナリングをしたという意味も大きかったのです。2着という結果は揺るぎのないモノでしょうが3、4着のプログノーシスとダノンベルーガとの差はイクイノックスに真っ向勝負を挑んだ馬とそうしなかった馬との違いであり、その2頭との着差はもう少し縮まる可能性もあったことだろうと思われます。
次はジャスティンパレスの宝塚記念までの4走における後半1000mの完歩ピッチ(1完歩に要する時間を平均した値。グラフの値が下になるほど、ピッチ=脚の回転が速いことを表す)の比較をご覧ください。
▲緩やかな波形となった2023阪神大賞典(白)や2023天皇賞(春)(黄色)に対し、2022有馬記念(ピンク)と2023宝塚記念(青)はスムーズに加速できていないことが読み取れる(作成:Mahmoud)
昨年の有馬記念は最内を進みました。3コーナーL800mからピッチが少し緩みだし鞍上のT.マーカンド騎手が激しく手を動かすものの4コーナーを回り切る手前のL400mまでピッチはあまり速くならず。現在よりも力が付いていない状態だったとはいえ、中山競馬場内回りでのインベタのコーナリング性能は高くありません。ストライドの大きい馬なので当然です。
道中かなりのスローだった阪神大賞典は最内、天皇賞(春)は外目でしたが鞍上C.ルメール騎手がコーナー区間では決して急かすようなことをしないコーナリングを行い最速完歩ピッチ(脚の回転が最も速くなった)区間がきっちり直線区間となるようなラストスパートを敢行し快勝。
続く宝塚記念ではL600〜500mが最速完歩ピッチ区間となるような無理のあるコーナリングを行い、進路を上手く見出せなかったスルーセブンシーズに先着されました。つまり中山競馬場内回りではスムーズなレースをする難易度がグッと高まるのがジャスティンパレスということです。これはストライドの大きい馬の宿命でもあります。
▲ストライドの大きいジャスティンパレスが有馬記念の舞台でスムーズなレースをすることはかなり難しい(C)netkeiba.com
このジャスティンパレスに宝塚記念で先着したスルーセブンシーズ。近3走の後半1000mの完歩ピッチの推移を見ていきましょう