▲熊沢重文元騎手が有馬記念と中山大障害を展望!(撮影:福井麻衣子)
今週末は師走の大一番・有馬記念と中山大障害が行われます。2つのビッグレースを制覇したことがあるのが熊沢重文元騎手。ブービー人気で大波乱を演出した1991年有馬記念の「これはビックリ、ダイユウサク」、念願の初制覇となった2012年中山大障害マーベラスカイザーの思い出、コース攻略、さらには今年の展望を伺いました。
前編は中山大障害、後編は有馬記念をお送りします。
(取材・構成:大恵陽子)
「襷からコースに出て行く時はコーナーがキツい」勝利時の進路取りの意図
──まずはマーベラスカイザーと中山大障害の思い出からお伺いします。
熊沢 自分で障害馬として作って、初めて自信を持って中山大障害に臨めた馬でした。
──障害デビュー戦は早め先頭から押し切って、強さが光る一戦でした。素質が高かったんですね。
熊沢 練習のときからセンス良くて、手のかからない子でしたね。障害未勝利戦ではちょっと桁が違って、出遅れて後方から徐々に位置を上げていきながら、最後はもう突き放していました。本当に強いなと思いました。
──その後、別のジョッキーが乗った時もスタートはゆっくりでした。
熊沢 一歩目が出ていかないんですよ。中山大障害を勝ったときも出遅れています。
──それでも序盤はロスなく運びました。
熊沢 出遅れたんですけど、うまく内のスペースが空いていたので、一つ目の障害を飛ぶまでに前との差も詰められました。その後は落ち着いたところで折り合いに専念できましたね。
──最初の襷コースで外に出しましたが、その意図は?
熊沢 この馬は細かいコーナーがあまり得意じゃなくて、8の字になっている襷からコースに出て行く時はコーナーがキツいのでゆったり回りたくて外に出しました。あそこでちょっと無理させると、腰をひねってしまう馬も中にはいて、どちらかと言うと体が硬いタイプだったので、意識して大きく回るようにしました。
──ロスなく回ることだけが正解ではないんですね。その後、再びインに入れると、直線入り口で前の馬を交わして先頭に立ちました。
熊沢 あのコーナー以外はロスなく回れればいいと考えていました。いい手応えで回ってこられて、「これなら間違いなくいい勝負になる」と感じながら乗っていました。直線は他にいい脚を使う馬がいるかもしれないので油断はできなかったですけど、勝ちは間違いないなと思って乗っていました。勝てて嬉しかったですね。
──熊沢さんにとって中山大障害はどんなレースですか?
熊沢 ずっと「勝ちたい、勝ちたい」と言っていた念願のレースでした。
▲2012年に中山大障害を勝利したマーベラスカイザーと熊沢重文元騎手(撮影:下野雄規)
「ちょっと貸してください」全騎手が熊沢元騎手レギンス着用
──中山大障害は普段の障害レースよりも高い障害を飛んだり、高低差の大きなバンケットの上り下りがあります。どういう特徴を持った馬が向いていますか?