▲競馬界にも、女性従業員が働きやすい環境が求められる(C)netkeiba.com
女性の進出という観点で見れば、2023年の中央競馬は、歴史的な年として記録されるだろう。3月から2人増えて6人となった女性騎手は、50勝と躍進した永島まなみ騎手(栗東)を筆頭に、全員が2桁勝利をあげた。12月には、24年度の新規調教師試験で前川恭子・調教助手(当時栗東・坂口智康厩舎)が合格。24年1月1日付で免許が交付され、中央競馬史上初めての女性調教師が誕生した。
「経営者」出現の意味
前川調教師は千葉県富里市出身。厩舎関係者との縁故はないが、実家の近くが馬産地であったため、幼い頃から馬に親しむ機会があり、筑波大時代は馬術部で活動。美浦の乗馬苑でアルバイトをしたことが、トレセン入りにつながった。牧場勤務を経て03年に競馬学校厩務員過程を履修し、同年10月に栗東・崎山博樹厩舎で厩舎人として一歩を記した。
今回が5回目の受験で、平均的な受験者よりは遅めのスタート。栗東の他厩舎の調教助手との間に高校生の長女がいる。出産や育児のようなライフイベントによる経歴断絶が、職業人として不利に働くのは、一般社会でもごく普通に起きる問題だが、壁を越えての合格だった。
厩舎という職場で、女性は圧倒的な少数派だ。16年デビューの藤田菜七子騎手の活躍を受けて、騎手は増加傾向にある。19年に導入された一般競走での恒久減量制度も追い風となり、23年は6人で135勝。週に2回以上は勝っている計算だ。だが、騎手より敷居が低そうに映る調教助手、厩務員が意外に増えない。23年12月20日の時点で、調教助手は15人(美浦7、栗東8)、厩務員17人(美浦11、栗東6)の32人。全体(2317人=美浦1165、栗東1152)の1.4%に過ぎない。女性騎手の比率が5.6%。近年は毎年のように女性がデビューしており、遠からず2桁に届く気配である半面、厩舎従業員は足踏みしている。
こうした中で、女性調教師が誕生した意味は大きい。業界を1つの企業に見立てれば