セール時の評価を覆す激走 母父の持つ「サンデー×ダンジグ」が呼び起こす高い能力
血統で振り返る弥生賞
【Pick Up】シンエンペラー:2着
レース前、すでに皐月賞の出走権利を持っていたので、本番を見据えての仕上げだったはずです。人気が拮抗していたほかの2頭がいずれも掲示板に載れなかったことを考えると、2着という成績は上々でしょう。
2014年から2023年までの10年間で、良馬場で行われた弥生賞は7回ありましたが、1000mの平均通過タイムは61秒4。同皐月賞は59秒3。トライアルはゆるく、本番はきついペースで展開します。シンエンペラーは凱旋門賞と仏ダービーを制したソットサスの全弟で、「シユーニ×ガリレオ」というフランス産馬。瞬発力を伝えるサンデーサイレンスを持たず、持続力とスタミナを武器とする血統構成です。それだけに、本番のきついペースのほうが持ち味が活きるタイプでしょう。
一度叩いての上積み、3歳春に急上昇して仏ダービーをレコード勝ちした兄の成長力を考えると、次走の皐月賞に向けてこれから大きく前進できるのではないかと思います。
血統で振り返るチューリップ賞
【Pick Up】スウィープフィート:1着
父スワーヴリチャードは、昨年のファーストシーズンサイアーチャンピオン。重賞勝ち馬は、京成杯2歳Sを勝ったコラソンビート、ホープフルSを勝ったレガレイラに次いで3頭目です。
初年度の血統登録頭数は82頭と少なめで、繁殖牝馬の質もそれなりでしかなかったのですが、華々しい成功を収めています。
スウィープフィートは、サマーセールでわずか385万円(税抜で350万円)で取り引きされた馬でした。2代母は名牝スイープトウショウ(宝塚記念、エリザベス女王杯、秋華賞)。母の父ディープスカイは、現役時代に日本ダービーとNHKマイルCを勝った一流馬ですが、産駒成績がダート寄りだったことが災いし、種牡馬として徐々に人気を失って2021年の種付けを最後に引退しています。
ディープスカイは「サンデー系×ダンジグ系」という配合構成。スワーヴリチャード産駒の収得賞金上位4頭、レガレイラ、スウィープフィート、コラソンビート、アーバンシックは、いずれもサンデーサイレンスのクロスと、母方にダンジグを持つという配合的共通点があります。
したがって、スウィープフィートの高い能力は、母の父に入るディープスカイが大きな役割を果たしているのではないか、と考えられます。
知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【シアトルスルー】
1977年に無敗で米三冠を達成。引退後は1984年に北米チャンピオンサイアーとなりました。自身が先行力を武器としたように、スピードの持続力を伝えました。切れる脚はないものの、先に行ってしぶとい中距離血統で、配合によっては芝向きの馬も出し、日本ではタイキブリザードやダンツシアトル、マチカネキンノホシやヒシナタリーが芝重賞を勝ちました。
エーピーインディを通じてサイアーラインを発展させており、近年のアメリカ最強馬であるフライトラインも直系子孫です。シニスターミニスター、パイロ、マジェスティックウォリアーといった優秀な種牡馬がダート戦線で大活躍しています。
血統に関する疑問にズバリ回答!
「今年からダート三冠がスタート! 注目の血統はある?」
今年から南関東の大井競馬場で行われる羽田盃、東京ダービー、ジャパンダートダービーは、いずれもJRAと他地区地方馬に開放し、賞金も増額されます。
直近1年間の大井種牡馬ランキングは、1位シニスターミニスター、2位パイロ、3位エスポワールシチー、4位ホッコータルマエ、5位マジェスティックウォリアーの順。エーピーインディ系が3頭入っているのが目に付きます。これらの血を持つ馬は要注目です。