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【宝塚記念回顧】ルージュエヴァイユがハナを切ったワケ──特殊な馬場でも“彼女の走り方”で結果を残すための選択とは【月刊 川田将雅】

  • 2024年06月27日(木) 18時01分
“VOICE”

▲川田将雅騎手がルージュエヴァイユと挑んだ宝塚記念を回顧!(撮影:福井麻衣子)


先日京都競馬場で行われた宝塚記念。強豪揃い、しかし明確な逃げ馬不在の中、ハナを切ったルージュエヴァイユと川田騎手は大きな話題を呼びました。今回は、その“まさかの展開”になったレースを詳しく解説。

「最悪、後ろから後ろで終わってしまう」と感じた理由や、ゲートが開くまでの準備など..。初騎乗で初めての“逃げ”を選んだ川田騎手の思考に迫ります。併せて、1か月の休暇を発表したルメール騎手との、和気あいあい!? なやり取りも伺いました──。

(取材・構成=不破由妃子)

宝塚記念で考えた最善策「返し馬からある程度準備をして」


──今年の宝塚記念は展開予想がとても難しく、どの馬が行くのか、正直まったく読めませんでした。でも、まさか川田さんがハナを切るとは!

川田 逃げようと思っていたわけではないんですけどね。最初のコーナーに向かいながら周りの雰囲気を伺うと、プラダリア(池添謙一騎手)は抑えに入っていたし、カラテ(岩田望来騎手)も行きたいわけではなさそうだった。そういった様子を見て、それなら僕が行ってレースを作ろうと。

──人気薄の馬で川田将雅が逃げている…。得も言われぬ怖さというか、妙なワクワク感がありましたよ。ハナを切ったのは結果論だとしても、ここ数戦、後方から競馬を進めていたルージュエヴァイユを前に行かせたのには、何か狙いがあったんですよね?

川田 どうしても伸びて走りがちというか、僕ら乗り手が言うところの「口が遠い」馬なんですよね。

──口が遠い馬?

川田 全体的に前後に体が伸びた状態で走るから、僕らが乗っている位置からすると、口が遠く感じるんです。体を起こして走ってないから、手綱が長くなる。

“VOICE”

▲ルージュエヴァイユは「僕ら乗り手が言うところの口が遠い馬」(ユーザー提供:あずきさん)


──いわゆる“抱えて乗る”タイプの馬ではないと。

川田 あの日の馬場的にも、ですね。そういう馬を「口が遠い」と表現するんですけど、映像で見たときからそれは感じていましたし、レース前に黒岩調教師からもそういう馬だと聞いていて、跨って歩き出してすぐに「なるほどね」と。すぐに口の遠さを感じるくらいのバランスなんですよね。

──それがいいとか悪いとかではなく、馬の個性ということですよね?

川田 そう、今のルージュエヴァイユはそういうタイプの馬だということ。実際、そういう走りでエリザベス女王杯2着、大阪杯3着とGIでも結果を出してきていますから。ただ、宝塚記念は、ああいう馬場になってしまった。重馬場では、彼女のバランスはプラスに働かない。どうしてもね。

──なるほど。それで一計を案じた。

川田 この馬のバランスがプラスにはならない馬場を走るうえで、最善の策は何かと考えながら返し馬にいって、馬場の荒れたところもそこまでではないところも走らせて確認してみたんですけど、思っていたよりは走れたんですよね。少なくとも、全然進んで行けない感じではなかった。で、これならある程度は動けるなと。

 とはいえ、これまで結果を残してきたような競馬をこの馬場でやったとして、はたして結果が出るかとなると、やはり彼女の走り方では難しいだろうと僕は判断した。

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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