▲除外や競走中止を選択する思いとは(撮影:福井麻衣子)
今回、川田騎手が解説するテーマは、競走馬のアクシデントの一つである「跛行(はこう)」について。
「跛行」とは「歩様の乱れのすべて」を指し、乗っている人にしかわからない微妙な違和感から、誰が見ても明らかに異常がある場合まで、その程度はさまざまだそう。
人馬の命を守るため、ジョッキーとしての意思決定の背景に迫ります──。
(取材・構成=不破由妃子)
「少しでも嫌な違和感があれば、迷わずやめるのが僕の基本です」
──この春は、皐月賞のダノンデサイル、鳴尾記念のロードデルレイなど、大きな舞台でも跛行による除外があり、条件戦を含めると、年間を通して毎週必ず複数頭が跛行で除外、あるいは競走中止になっています。そこで、跛行というのはどういう状態を言うのか、改めて川田さんにお聞きしてみたいなと思いまして。
川田 特定の症状を指すのではなくて、歩様の乱れのすべてです。歩様に異常がある=跛行。つまり総称ですね。ただ、その程度は本当にさまざまで。誰が見ても明らかに歩様に異常がある場合もあれば、乗っている人にしかわからないレベルの跛行もある。
鳴尾記念のロードデルレイは前者のパターンです。僕が歩様に違和感を覚えて、返し馬で止める、やり直すなどいろいろやっているのを発走委員や獣医も見ていて、明らかにレースには向かえない歩様をしていたので、僕が申し出る前に「あれはやめるな」とわかっていたと思います。歩いてゲート裏に馬を連れてきた時点で、何も言わずとも曳き手を持って寄ってきましたから。それくらい、はっきりとわかる跛行でしたね。
▲鳴尾記念で馬場入場後に競走除外となったロードデルレイ(ユーザー提供:yu_299さん)
──乗っている人にしかわからないようなすごく微妙な違和感の場合、ジョッキーが「除外にしてほしい」と申し出ても「ダメだ」となるケースもあるんですか?