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跛行による除外や競走中止──繊細な感覚と経験が導く「確実に事故を防ぐための選択」【月刊 川田将雅】

  • 2024年08月15日(木) 18時01分
“VOICE”

▲除外や競走中止を選択する思いとは(撮影:福井麻衣子)


今回、川田騎手が解説するテーマは、競走馬のアクシデントの一つである「跛行(はこう)」について。

「跛行」とは「歩様の乱れのすべて」を指し、乗っている人にしかわからない微妙な違和感から、誰が見ても明らかに異常がある場合まで、その程度はさまざまだそう。

人馬の命を守るため、ジョッキーとしての意思決定の背景に迫ります──。

(取材・構成=不破由妃子)

「少しでも嫌な違和感があれば、迷わずやめるのが僕の基本です」


──この春は、皐月賞のダノンデサイル、鳴尾記念のロードデルレイなど、大きな舞台でも跛行による除外があり、条件戦を含めると、年間を通して毎週必ず複数頭が跛行で除外、あるいは競走中止になっています。そこで、跛行というのはどういう状態を言うのか、改めて川田さんにお聞きしてみたいなと思いまして。

川田 特定の症状を指すのではなくて、歩様の乱れのすべてです。歩様に異常がある=跛行。つまり総称ですね。ただ、その程度は本当にさまざまで。誰が見ても明らかに歩様に異常がある場合もあれば、乗っている人にしかわからないレベルの跛行もある。

 鳴尾記念のロードデルレイは前者のパターンです。僕が歩様に違和感を覚えて、返し馬で止める、やり直すなどいろいろやっているのを発走委員や獣医も見ていて、明らかにレースには向かえない歩様をしていたので、僕が申し出る前に「あれはやめるな」とわかっていたと思います。歩いてゲート裏に馬を連れてきた時点で、何も言わずとも曳き手を持って寄ってきましたから。それくらい、はっきりとわかる跛行でしたね。

“VOICE”

▲鳴尾記念で馬場入場後に競走除外となったロードデルレイ(ユーザー提供:yu_299さん)


──乗っている人にしかわからないようなすごく微妙な違和感の場合、ジョッキーが「除外にしてほしい」と申し出ても「ダメだ」となるケースもあるんですか?

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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