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【キーンランドC】サトノレーヴが北海道スプリント重賞2連勝 秋の大一番へ向け期待が高まる

  • 2024年08月26日(月) 18時00分

スムーズさ欠いたナムラクレアの巻き返しにも期待


重賞レース回顧

キーンランドCを制したサトノレーヴ(撮影:高橋正和)


 5歳牡馬サトノレーヴ(父ロードカナロア)が、6月の「函館スプリントS」に続き北海道シリーズのスプリント重賞2連勝を達成した。洋芝札幌のキーンランドCは高速決着になることは少ないが、1分07秒9の勝ち時計は、2012年のパドトロワの1分07秒6に次ぐ歴代2位タイの好タイムだった。

 サトノレーヴが芝1200mを1分07秒台で乗り切って勝ったのは4度目。スプリンターズSの行われる中山1200mには1分07秒1の快時計がある。スプリンターズSのレースレコードは、同レースを2連覇した父ロードカナロアが2012年に記録した1分06秒7。サトノレーヴが今春の春雷Sでマークした1分07秒1は、スプリンターズSに当てはめると、同レースを2連覇した母の父サクラバクシンオーの1994年の1分07秒1などと並んで史上3位タイの快時計になる。

 サトノレーヴは単にスプリンターズSの優先出走権を得ただけではなく、改めて最有力馬の1頭であることを証明する快勝ともいえる。

 ロードカナロアは典型的スプリンターではなく、また母の父サクラバクシンオーもマイル戦まで楽にこなしたので単なるスプリンターではないが、抜群のスピード能力を秘めるサクラバクシンオーと、ロードカナロアのような組み合わせは、少し前まで嫌われることも多かった。というのは、うまくいけば圧倒的な快速馬が誕生する可能性はあるものの、ややもすると「スタミナがない」という弱点が出てしまう遺伝が珍しくなかったからだと考えられていた。

 しかし、現代の主流血脈は著しく限られている、多くの馬の血統背景に大きな違いや隔たりがない時代に移っている。サトノレーヴは好タイムを中心に芝1200mをパーフェクトに近い【6-1-0-0】。スピード系の種牡馬と、快速型の種牡馬の組み合わせも、別に弊害とはならない時代になったのかもしれない。

 サクラバクシンオーの牝馬に、父ロードカナロアの配合から、2023年のGI高松宮記念などを制したファストフォースを筆頭に、名牝系出身の今回のサトノレーヴ、テイエムトッキュウ、キルロード、サンキューユウガ、サイクロトロンなどの活躍馬が誕生している。

 2着に突っ込んだのも5歳馬エイシンスポッター(父エイシンヒカリ)。J.モレイラ騎手を配したわりに人気薄だったが、こちらは芝1200mに1分07秒台が7回もあったスプリンタータイプ。父エイシンヒカリの全10勝は芝1800-2000mで、母の父Baratheaバラシアもマイラー系。快速タイプではないが洋芝がベストだったのだろう。

 インぴったり追走から巧みなコース取りはモレイラ騎手だからこその手綱さばきだが、そのモレイラ騎手の12レースを差し切った瞬間の、あんな嬉しそうな二度のガッツポーズは初めてだった。外国人騎手の短期免許制度の成績要件が変更され、WASJシリーズで5位以内なら来年以降の申請が可能になることを痛いほど意識していたのがモレイラ騎手であり、最終レースで大逆転したからだった。

 2着のエイシンスポッターとともに、豪快に3着に追い込んだ武豊騎手のオオバンブルマイ(父ディスクリートキャット)も、吉村圭司厩舎の2頭出しでスプリンターズSに挑戦の意向を明らかにしている。オオバンブルマイは初の1200mだったため、上がり最速の33秒2を記録しながら届かなかったが、坂のある中山のスプリンターズSが超高速決着にならなければ好勝負だろう。オオバンブルマイの勝利はいつも伏兵評価だ。

 道中苦しい位置で揉まれたが、直線でスペースを探して小差4着に突っ込んだ5歳牝馬モリノドリーム(父モーリス)も上がり馬らしい好内容だった。早熟系ではないのでもうひと回りパワーアップする可能性がある。

 1番人気のナムラクレア(父ミッキーアイル)は、ちょっと残念な5着。道中はスムーズだったが、インを狙った最後の直線で狭くなり、先行して失速しかかっていたエトヴプレ(父Too Darn Hotトゥーダーンホット)と接触してしまった。多頭数の短距離戦だけにあれは仕方がない。少し評価の落ちるスプリンターズSで巻き返したい。

 その3歳エトヴプレは、53キロを利してかなりスムーズに先行できたが、今回は一気に相手強化。まだ追い比べに持ち込まれる形になっては伸びない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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