▲西山茂行オーナーと勝浦正樹元騎手による対談は後編に(c)netkeiba
「セイウン・ニシノ」の冠名で知られる西山茂行オーナーと勝浦正樹元騎手の対談後半戦。引き続き思い出話に花を咲かせながら、和やかな雰囲気で進みます。
互いの魅力を語る中で、勝浦元騎手の引退は“寂しい”と話す西山オーナー。「調教師になる選択肢はなかったの?」という質問への答えとは...? 後半も二人の信頼関係と“縁”の深さが伝わるお話たっぷりでお送りします!
(取材・構成=不破由妃子)
勝浦元騎手と歩んだ日々は「馬主として面白かったよ」
──勝浦さん、セントライト記念のあとにニシノデイジーの乗り替わりを告げられたとき、相当ショックだったのではないですか?
勝浦 いえ、もう全然。以前から感じていたことでもあったので、ビックリもしませんでした。乗り替わりなんて、いつ何時あっても驚きませんよ。「ここまでありがとうございました」という感じでした。
──ホントですか?
勝浦 ホントですよ。そんなものです。
西山 競馬の世界って、意外とそんなものでね。馬主側だって、乗ってほしいジョッキーに乗ってもらえないことなんてしょっちゅうあるんだから。たとえばあのとき、デイジーよりいい馬の依頼が勝浦にきたら、「すみません。そっちに乗ります」となる。そんな例はしょっちゅうだよ。それにいちいち腹を立てていたら、馬主なんてやっていられない。ジョッキーもそうでしょ?
勝浦 もちろん、快く「どうぞ、どうぞ」ということはないですよ。あとはキャリアも関係ありますよね。デビューしたばかりの頃だったら「チキショー!」と思ったかもしれませんが、デイジーに乗っていた頃もまだそんな感じだったとしたら、ジョッキーをここまで続けていられなかったと思いますよ。
──とはいえ、結果的にニシノデイジーの東京スポーツ杯2歳S(2018年)が、勝浦さんにとって最後の重賞勝利になって。思い入れの強い1頭では?
勝浦 もちろんです。めちゃくちゃデカい存在です。
西山 俺にとってもあの馬の存在は大きい。なにしろ、母方の祖母であるニシノミライは、セイウンスカイとニシノフラワーの子だからね。デイジーには、いろんな思いが詰まってる。しかし、こうして振り返ると面白いね。ショータイム、ラピート、ムーンライト、デイジー…。勝浦との思い出は、挙げ出したら切りがない。馬主として面白かったよ。
▲勝浦元騎手との沢山の思い出を振り返る西山オーナー(c)netkeiba
勝浦 ほかのジョッキーはわかりませんが、僕でいうと、意外とオーナーとの直接的なお付き合いは少なかったんですけど、そんななかでも社長には本当に可愛がっていただいて。
──勝浦さんは、西山オーナーにどんな魅力を感じていらっしゃいますか?
勝浦 魅力というか、すべて好きです、本当に。さっきも言いましたけど、馬主さんとここまで距離が近くなること自体がないですし、社長のように食事に誘ってくださる方もあまりいないし。
西山 勝ったらお祝い、負けたら反省会。それにしても、性懲りなくよく乗せたよな(笑)。
勝浦 性懲りなく(笑)。本当に感謝しかないですよ。
西山 なんだかんだ言っても、勝浦はね、不思議な能力を引き出してくれることがあったから。2020年だったかな、ニシノドレッシーで2連勝したけど、勝浦じゃなかったら勝てなかっただろうなというくらい難しい競馬をした。
勝浦 あの馬はめちゃくちゃ癖があって…。普段からかなり苦労していたので、結果が出たときは本当にうれしかったですね。
──西山オーナー、やっぱり勝浦さんの技術を買ってらっしゃるじゃないですか。
西山 だからそこまで