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【スプリンターズS】ルガルが半年ぶりの一戦で復活の勝利 人馬共にGI初制覇

  • 2024年09月30日(月) 18時00分

ドゥラメンテ産駒の可能性を広げた


重賞レース回顧

スプリンターズSを制したルガルと西村淳也騎手(撮影:下野雄規)


 1番人気だった春のGI高松宮記念で10着だった(レース後に骨折が判明)4歳牡馬ルガル(父ドゥラメンテ)が、半年ぶりの一戦で鮮やかに復活した。

 3歳牝馬の伏兵ピューロマジック(父アジアエクスプレス)が演出したレース全体の流れは「前半32秒1-後半34秒9」=1分07秒0。前半3ハロン32秒1は、GI昇格の1990年以降最速の猛ペースだった。これを少し離れた3番手で追走し、坂を上がって先頭に立って押し切ったルガルの1分07秒0は「前後半32秒8-34秒2」。GIになって以降、2012年ロードカナロアの1分06秒7に次ぐ史上2位タイの快時計だった。

 ルガル自身も、デビュー7年目の西村淳也騎手も、江馬オーナーもGI初勝利。4歳ルガルは通算[4-4-1-4]。「海外を含めこれからの選択肢はいろいろある(杉山晴紀調教師)」。まだ4歳だけにさらに大きな未来が広がる勝利だった。

 ルガルはダート1800mから出発して、やがて芝の1200mのスペシャリストに。わずか5世代の産駒を送っただけで早世した父ドゥラメンテ(2023年のチャンピオンサイアー)は、さまざまな部門で傑出した産駒を輩出する。3冠牝馬リバティアイランドの父であり、3200mの天皇賞(春)の勝ち馬も、3000mの菊花賞馬も、マイルのGI馬も、ダートJBCレディスクラシックの勝ち馬も送り、今回は快速スプリンターの父となった。自身の持つさまざまな可能性も、交配された牝馬の秘める資質も、すべて前面に出してしてくれるのだろう。ルガルの母父は、短距離7FのGIも、英ダービーも、英チャンピオンS10Fも制したちょっと不思議な種牡馬New Approach(ニューアプローチ)だが、ドゥラメンテはもっと大きな可能性に満ちた種牡馬だ。

 やがて、ルガルも種牡馬となるはずだが、産駒の距離適性など問わない名牝Miesque(ミエスク)(Kingmamboキングマンボなどの母)の「4×4」を秘めるルガルは、さらに不思議な種牡馬になるのかもしれない。

 2着トウシンマカオ(父ビッグアーサー)は、脚質からすると決して有利ではなかった内枠2番から、いつもより早め(自身の前半3ハロン33秒5)に動いて突っ込んだから、今回の内容は見事。1200mの重賞4勝馬であり、サクラバクシンオーが代表する父系の真価を示したレースだった。半年のブランク明けで快走した勝ち馬がすごすぎた。

 3着ナムラクレア(父ミッキーアイル)の前後半は「33秒9-上がり最速の33秒2」=1分07秒1。自身の最高時計と同じであり、結果はちょっと置かれすぎた印象も残ったが、脚を余しての内容ではなく、5歳牝馬ながらこれまで以上に中身があった。長谷川調教師は「オーナーと相談したい」と時計と早くも来季の高松宮記念を展望する。ストレイトガールは6歳秋のスプリンターズSを勝っている。スペシャリストの距離では年齢はさして響かないケースが珍しくない。

 1番人気のサトノレーヴ(父ロードカナロア)は、この日一鞍だけしか騎乗していなかったD.レーン騎手がリズムに乗れなかったのか、スタートもう一歩。素晴らしい馬体に映ったあたり、逆に少し余裕があったのかもしれない。だが、同じスプリンターにもタイプの違いがあり、中団に位置したサトノレーヴの前半3ハロンは「33秒6」。この馬とすればこれまででもっとも速い前半3ハロン通過だった。春の春雷Sを差し切った1分07秒1の自身のバランスは「33秒9-33秒2」。これまでより相手が強化していたレースで、前が飛ばす厳しいペース。わずかな差ではあるが、余力を持って追走できると切れるサトノレーヴの最大の良さが削がれてしまったのではないかと思えた。

 香港のビクターザウィナーの高松宮記念は重馬場にしてもスローの逃げで「34秒9-34秒5」。今回の自身の前半は「33秒1」。懸命に見せ場は作ったが流れが違いすぎた。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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