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夏を越して一躍世代トップの座に スワーヴリチャード産駒のGI馬の共通点は?

  • 2024年10月21日(月) 18時00分

血統で振り返る菊花賞


【Pick Up】アーバンシック:1着

 ありあまる素質に恵まれながら、春シーズンまでは道中で折り合いを欠いたりソラを使ったりと、気性面の幼さが邪魔をして実力を出し切れませんでした。しかし、夏を越してそうした面が改善されると、一躍世代トップの座に上り詰めました。良い結果を出すべくこの馬に関わったホースマンの勝利です。

 父スワーヴリチャードは現3歳が初年度産駒で、重賞6勝目。3歳世代ではキズナ(7勝)に次いで第2位です。GI馬を2頭出した種牡馬はエピファネイアとスワーヴリチャードしかいません。

 もう1頭のGI馬レガレイラ(ホープフルS)は、“父が同じで母同士が全姉妹”という関係。血統構成は100%同じです。牝系はディープインパクトの母として名高いウインドインハーヘアにさかのぼります。母方にダンジグを持つスワーヴリチャード産駒は成功しており、アーバンシックとレガレイラの他に、スウィープフィート(チューリップ賞)、コラソンビート(京王杯2歳S)、パワーホール(札幌2歳S-2着、共同通信杯-3着)などが出ています。

 ちなみに、菊花賞の2レース前、2勝クラスの清滝特別(芝2200m)を4馬身差で圧勝したサブマリーナは、やはりスワーヴリチャード産駒。フレグモーネで神戸新聞杯を取り消し、菊花賞を断念したという経緯がありました。順調であれば両レースとも好勝負していたのではないかと思わせる素質馬です。アーバンシックともども芝中長距離の重賞戦線で注目したい馬です。

 スワーヴリチャード産駒の牡馬は、1400m以下の短距離ではもうひとつですが、マイル以上ではきわめて優れたパフォーマンスを披露しています。

 逆に牝馬は2000m以下を得意としています。

血統で振り返る富士S


【Pick Up】ジュンブロッサム:1着

 ゴールドティアラ(南部杯)にさかのぼるファミリーは、2歳戦から頭角を現し、古馬まで息の長い活躍をするのが特長です。本馬とほぼ4分の3同血(母同士が全姉妹で、父が親仔)のステファノスは、3歳時に富士Sを勝ったあと、5歳秋に天皇賞(秋)と香港Cで3着、6歳春に大阪杯で2着となりました。

 本馬は2歳秋に東京芝2000mの2歳レコード(1分59秒2)を樹立して素質を示し、5歳秋にして初めて重賞を制覇しました。血統的に近いステファノスの蹄跡から考えると、来年までは十分トップクラスで頑張れるのではないかと思います。

 父ワールドエースはマイラーズCときさらぎ賞の勝ち馬で、皐月賞2着馬。屈腱炎にならなければGIに手が届いたのではないかと思わせる素質馬でした。ワールドプレミア(天皇賞(春)、菊花賞)の全兄、ヴェルトライゼンデ(日経新春杯、鳴尾記念)の半兄にあたる良血です。

 種牡馬としてはレッドヴェロシティ(青葉賞3着)、メイショウシンタケ(京成杯AH4着)、モンドデラモーレ(札幌2歳S4着)などを出しており、今回が初めての重賞勝ちとなります。芝向きで、距離の融通性があります。

 前走の関屋記念は出負けして3着。今回は外を回って鮮やかに突き抜けました。以前とは見違えるように地力が強化されているので、次走のマイルCSも好勝負可能でしょう。

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【ラストタイクーン】

 アイルランドで生まれ、フランスの厩舎に入り、ヨーロッパの短距離路線で活躍。イギリスでふたつのG1を制覇しました。5ハロン特化のスプリンターでしたが、3歳秋に大西洋を渡ってアメリカのBCマイル(G1・芝8ハロン)に挑戦すると、まったくの人気薄ながら鮮やかに抜け出して勝ちました。

 従兄弟にビカラ(仏ダービー)、アサート(愛ダービー、仏ダービー)、ユーロバード(愛セントレジャー)の3きょうだいを持つなど近親には多くの活躍馬が並び、父トライマイベストはエルグランセニョール(英2000ギニー、愛ダービー、デューハーストS)の全兄。

 種牡馬として成功し、シャトル種牡馬として渡ったオーストラリアで1993-94年にチャンピオンサイアーとなりました。日本ではアローキャリー(桜花賞)、オースミタイクーン(マイラーズC、セントウルS)、オースミブライト(神戸新聞杯、京成杯)など5頭がJRA平地重賞を勝ちました。

 息子のビッグストーンはメイショウドトウ(宝塚記念)の、同じくマージュはサトノクラウン(宝塚記念、香港ヴァーズ)の父となっています。サトノクラウンは日本ダービー馬タスティエーラを出しました。ニュージーランドに残したオライリーという産駒は同国で4回チャンピオンサイアーとなっています。

 産駒は芝向きで、基本的にはスピードタイプ。ただ、配合次第で2000mあたりまでこなしました。キングカメハメハの母の父としてわが国の馬産に大きな影響を与えています。

血統に関する疑問にズバリ回答!


「ナダル産駒のダート成績が凄まじいのですが、過去の種牡馬と比較するとどのくらいですか?」

 ダート戦におけるここまでの成績は、32戦して11勝、2着7回、3着4回。勝率34.4%、連対率56.3%、複勝率68.8%という驚異的な成績です。もちろん、まだ産駒は出始めであり、新馬・未勝利を勝ち上がってクラスが上がれば、この数値を維持することは困難です。とはいえ、少なくとも初年度産駒が2歳秋の段階で、これほどの成績を残したダート種牡馬は記憶にありません。

 ダートに限らなければサンデーサイレンスが思い浮かびます。同馬の初年度産駒は、1994年の2歳戦(当時の3歳戦)において勝率27.8%、連対率48.7%、複勝率63.0%という成績でした。出てくる産駒がことごとく馬券に絡むような活躍ぶりに、革命的ともいえる新たな活力を感じたものです。

 ナダル産駒は「砂のサンデーサイレンス」と形容したくなるほどです。ひょっとしたらアメリカは、タピットやイントゥミスチーフ級の逸材を日本に売ってしまったのではないか……とすら感じます。このいささか先走った妄想がもし事実であったとしたら、いずれナダル産駒がアメリカやドバイのビッグレースを勝つこともあるかもしれません。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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