▲エコロクラージュとのコンビで兵庫ゴールドカップを勝利した小牧太騎手(撮影:稲葉訓也)
先週の兵庫ゴールドカップで、移籍後初の重賞制覇を決めた小牧騎手。しかも後方追走からの鮮やかな差し切り勝ちで、その存在感を存分に見せつけてくれました。パートナーは、兵庫の生え抜き、エコロクラージュ。
「馬混みでもなんでもへっちゃら。精神的に強い」という頼もしいパートナーですが、普段の調教や返し馬では一変、まったく言うことを聞いてくれないそうで…。今回はレースを振り返りつつ、「だいぶ変わり者」だというエコロクラージュについて伺いました。
(取材・構成=不破由妃子)
馬混みも全然へっちゃらな馬だけど、なぜか返し馬ができない!?
──エコロクラージュで挑んだ兵庫ゴールドカップで重賞初制覇。おめでとうございます!
小牧 ありがとう。ナイターのメインレースで勝つのは気分がいいね。全国からメンバーが集まってきていたし、どれだけ走るんかなぁという感じやったけど、終わってみれば強かったね。ホントに強いわ。
──5番人気という評価でしたが、自信満々で乗っているように見えましたし、前々決着の多い地方のレースとは思えない鮮やかな差し切り勝ち。本当に強かったです。
▲4角8番手からの差し切り! その戦法を選択したワケは…?(撮影:稲葉訓也)
小牧 なんせ先頭に立ったら止めてしまう馬やから、タイミングを計って追い出して。
──ああ、そのタイプでしたか。
小牧 うん。でもね、そこだけ気を付ければ、レースでは何も考えなくていい。なんでもできる馬やと思う。
──今回はゲートも決まりましたね。
小牧 前回もそうやったけど、いつも出遅れていた馬でね。絶対に何かあるはずやと思って、「歯が尖っていたりしてるんちゃうか」って指摘をしたんですわ。
──歯が尖る!?
小牧 そう。競走馬の歯って伸びるねん。だから歯は大事なんですよ。で、見てもらったら案の定、歯がすごく尖っていて。その部分がハミに当たっていた。
──歯がハミに当たっているということは、馬は痛いわけですよね?
小牧 痛い。それを嫌がって出遅れていたみたいやね。今回、そこを治してもらったら、練習のときからゲートを出るようになって。それがよかったんやと思う。
▲競走馬は、歯がハミに当たることを嫌がり出遅れることも(撮影:稲葉訓也)
いいレースができたし、もともと馬混みでもなんでも全然へっちゃらな馬でね。とにかく精神面が強いから、どこでも突っ込んで行ける。ただ、今回もちょっと狭いところに入ったりしたから、レース後は馬が心配で。ファンのみなさんがウイナーズサークルで待っていてくれたんやけど、馬の様子が気になって、サインもせずに戻ってしまった。申し訳なかったね。
──馬は大丈夫でしたか?
小牧 うん、大丈夫やった。しかしおもしろい馬やで。レースでは何でもへっちゃらなのに、返し馬ができないんやから。今回もパドックからゲートの奥までずっと引っ張って連れて行って。おとなしいんやけどね。
──返し馬をしようとするとどうなってしまうんですか?
小牧 止まるねん。で、来た道を戻ろうとしてしまう。
──帰っちゃうということ?
小牧 そう、帰っちゃう(笑)。攻め馬でも止まってしまって走らへん。
──大変そう…。どうやって仕上げているんですか?
小牧 調教で馬場に出るときもいつも厩務員さんが引っ張っていって、ほかの馬についていく形にせんと行かない。だから、僕らは調教に乗られへんねん。慣れている人じゃないと調教できん。
──ちょっと変わり者ですねぇ。
小牧 だいぶ変わり者よ(笑)。でも、レースでは全然大丈夫。能力もあるしね。逆にそういう馬のほうが走るのかもしれんね。次は兵庫ゴールドトロフィーか笠松か。どこに行っても走れる馬やと思うから、この先がホントに楽しみやね。
▲エコロクラージュについて「“だいぶ変わり者”でも、この先がホントに楽しみ」と手応え(撮影:稲葉訓也)
──先週も重賞を含めて5勝をマーク。そのうち3勝が金曜日に挙げたものですが、先週に限らず、小牧さんの傾向として、金曜日に2つ3つ勝つ傾向にありますよね。
小牧 金曜日のナイターが一番体調がいいわ。なんでかわかります?
──3日目ですから、確実に疲労は溜まっているはずなのに、一番体調がいいと…。んー、わかりません。
小牧 朝の調教が終わった後、レースが始まるまで時間があるでしょ。だから、金曜日だけ曾和鍼灸院に行ってんねん。
──ああ、以前おっしゃってましたね。マッサージと高圧酸素カプセルと。
小牧 そう、それや。しっかりマッサージをしてもらって、高圧酸素カプセルに1時間入る。そうするとね、疲れがいっぺんに取れんねん。騎乗馬の巡り合わせも当然あるやろうけど、とにかくナイターは体調がいいし、涼しいから好きです。でも、今週で終わってしまうんやね。ちょっと寂しいな。
(文中敬称略)