展開が向かなかったグループは再評価が必要
朝日杯FSを制したアドマイヤズーム(c)netkeiba
朝日杯FSが関西圏に移って今年で11回目。今年のレース全体の流れは「前半48秒0-(1000m通過60秒4)-後半46秒1(上がり33秒7)」=1分34秒1。
今年は初めて京都で行われたため例年との比較は難しいが、サトノアレスが勝った2016年(前半1000m通過60秒6)に次いで2番目のスローペースだった。京都コースの方が流れは落ち着くことが多いのは確かだが、マイルのGIとすると不思議なほど珍しいレース展開だった。
スローだと大きな着差は生じないことが多いが、勝ったアドマイヤズーム(父モーリス)が後続につけた差は「2馬身半、2馬身半、2馬身…」。1番人気で5着にとどまった同じモーリス産駒のアルテヴェローチェは1分35秒4。なんと1秒3もの差がついている。
また、上位4着までに入線したのはゼッケン「2、4、3、1」番。最内の4頭だった。これは、最後はコースの中ほどに出しているので、決してインを衝いたコース取りの差ではなく、レースの流れによる結果だった。この後のマイル路線のベースになる一戦だが、着順、着差はそのまま能力の結果ではないところがある。
2馬身半差で快勝したアドマイヤズーム、先行して2着した2番人気のミュージアムマイル(父リオンディーズ)の能力は素直に認めなければならないが、それ以下の各馬の結果は、マイル適性を含めて、大きな修正が必要になる。
勝ったアドマイヤズームは鞍上の自信に満ちた隙なしの好騎乗が光った。状態も素晴らしく良く、モーリス産駒の秘める可能性をフルに爆発させた。マイラーに近い体型で、陣営も「NHKマイルCを目標にする」ことを明らかにしているが、皐月賞の2000mまでは守備範囲とも思えた。
2着ミュージアムマイルもシンコウラブリイが代表するハッピートレイルズの一族なので、大目標はNHKマイルCを展望する路線か。スタートは速くなかったが、このペースなのでたちまちリカバリーできた。勝ったアドマイヤズームと同様、レース運びに自在性があるのが大きな強みだった。
1番人気で5着にとどまったアルテヴェローチェ(父モーリス)は、パドックでチャカチャカして気負い気味。あまりに流れが遅かったのでかかり気味の追走になったうえ、ペースが上がったところで置かれ気味になってしまった。前回は少頭数で馬群を避けた位置からエンジン全開となったが、今回は多頭数でもまれる展開。完全に若さが出てしまった。慣れてくればマイルがベストというタイプではなく、もっと距離はあった方がいいタイプと思えた。
気性に難しさの残るアルレッキーノ(父ブリックスアンドモルタル)は、ハナを切る作戦に出るのではないかと思えたが、ダッシュもう一歩。馬群にもまれる展開になり、前方にいたアルテヴェローチェと同様に折り合いを欠く追走になった。
3番人気で13着に失速したトータルクラリティ(父バゴ)は好スタートから先行できる位置になった。だが、今後のレースを考え一旦控えようとしたところ、終始かかり気味で折り合いを欠いてしまっては伸びない。
R.ムーア騎手を配したニタモノドウシ(父ディーマジェスティ)もスタート直後から行きたがって、かかり通し。トータルクラリティもそうだが、後半の追い比べを想定していたグループは、まだみんなキャリアが浅いだけに、予測外の超スローに対応できなかった。明らかに想定した本来のレース運びではなかったと思えるグループには、今回に限って、このあとの再評価が必要だろう。