コントレイル、ダノンザキッドに続く王道ローテ
ホープフルSを制したクロワデュノール(撮影:下野雄規)
最終的に単勝180円の1番人気に支持されたクロワデュノール(父キタサンブラック)には、小さな死角があった。体調面の不安があって前走の「東京スポーツ杯2歳S」は、いきなりプラス24キロの馬体重。そこから1カ月半後の今回は、水曜計測の馬体重は12キロ減の492キロ。まだ小学生のような若い体に目に見えない負担はかかっていないだろうか。
だが、ホープフルSのパドックに登場したクロワデュノールは、不安を吹き飛ばす素晴らしい馬体作りだった。そこで支持率はさらに高まった。
まだみんなキャリアの浅い2歳馬。力関係は定かではない。断然の1番人気になったクロワデュノール(北村友一騎手)のプレッシャーは大変だったはずだが、人馬ともに落ち着き払って非の打ちどころなし。100点満点のレース運びだった。「4コーナーで勝つと思いました(北村友一騎手)」と振り返る完勝で、3戦3勝。来季のクラシック候補の先頭に立つことになった。「新馬→東京スポーツ杯2歳S→ホープフルS」の無敗の3連勝は、ホープフルSがGIに昇格して以降、2020年ダノンザキッド、2019年コントレイルに次いで史上3頭目になる。また、斎藤崇史調教師=北村友一騎手とのコンビのGI制覇は、2020年のクロノジェネシス以来の快挙だった。
喜びあふれる笑顔でインタビューに答えていた北村友一騎手が、「GIを勝つことができてよかった」と思わず男泣きすると、背骨など8か所を骨折し心まで折れそうな騎手人生に見舞われたことを知っている多くのファンがウイナーズサークルにいて、暖かい祝福の声援に包まれた。完全に復活した北村友一騎手はGI勝利6勝となったが、クラシックはまだ未勝利。次のウイナーズサークルでの歓喜は、来春の皐月賞かもしれない。
クロワデュノールは、大成したイクイノックスと同じキタサンブラック産駒。母ライジングクロスは英オークス2着馬。その父ケープクロスは英ダービー馬を2頭(シーザスターズ、ゴールデンホーン)、母の父となっても2頭(オーストラリア、マサー)を輩出し、2009年の日本ダービー馬ロジユニヴァースの母の父にもなっている。明らかにクラシックタイプの種牡馬だ。ファミリーのそう遠くないところには、英ダービー馬が2頭もいる。
2着ジョバンニ(父エピファネイア)は、今回もスタート一歩。最内枠だけに外から被されるイン追走は決して楽ではなかったが、直線力強く伸びて上がり3ハロン34秒8は最速。ゴール前はまだ楽だった勝ち馬に2馬身なので完敗だが、クラシック路線に確実に乗ることに成功した。現3歳の半姉セキトバイーストは、今年のチューリップ賞2着、秋のローズS3着馬。2000m級までは十分にこなせる。
前後半「61秒4-59秒1」=2分00秒5のスローバランスを察知し、向正面から一気にスパートして4コーナー先頭。果敢なレース運びで3着に好走した17番人気ファウストラーゼン(父モズアスコット)は、人馬ともに見事。杉原誠人騎手の痛快な好騎乗によるところ大だが、決してフロックではない。人気上位の「2、3、4、5」番人気馬がそろって二桁着順に沈んだなか、前半最後方近くから自ら動いて2分01秒0で最後までバテなかった、父方祖父Frankelフランケル。祖母の父はクロワデュノールの母の父にも登場する欧州タイプのケープクロス。タフな成長力を見せる可能性がある。
1戦の戦績だけで4着に突っ込んできたジュタ(父ドゥラメンテ)は、最後の直線のパワフルな動きが光った。芝でも成長力を発揮するだろうが、ファミリーの血統背景からダート戦でも活躍しそうだ。
1着、2着の人気上位馬以外は惨敗してしまったが、みんな期待された素質馬。クラシック路線に加わるには、次も凡走しては苦しい。3歳初戦に注目したい。