“世界と戦う血脈”のフォーエバーヤング 計り知れない能力上限の秘密は…
血統で振り返るホープフルS
【Pick Up】クロワデュノール:1着
母ライジングクロスはパークヒルS(英G2・芝14ハロン143ヤード)を勝ったステイヤー。ヨーロッパ各国とアメリカを転戦し、他に英オークス2着、愛オークス3着という成績があります。海外のサイトによれば体高がわずか14.3ハンド(約145cm)しかなく、現役時代のレース映像を見てもその小ささは見て取れます。
ライジングクロスの産駒成績を見ると、オークス(GI)で4着と好走したアースライズ(父マンハッタンカフェ)を産んでいますが、同馬を含めて産駒のサイズは総じて小さめです。キタサンブラックが交配相手に選ばれたのは、体高が172cmと社台スタリオンステーション繋養の種牡馬のなかで最も背が高いことも理由のひとつでしょう。アースライズの父マンハッタンカフェも170cmの大型馬でした。
クロワデュノール自身は、父キタサンブラックのスラリとした体形を受け継ぎ、今回の馬体重は496kg。十分なサイズを備えています。
父キタサンブラックはすでにイクイノックス、ソールオリエンス、ウィルソンテソーロを出すなど長打力に定評があります。クロワデュノールはその列に加わる大物でしょう。母の父ケープクロスは、シーザスターズ、ゴールデンホーン、ウイジャボード(いずれもカルティエ賞年度代表馬)などの父で、大レース向きのスタミナと底力に定評があります。
新馬戦のラスト1000mは57秒3。のちに皐月賞を勝つことになるジオグリフと並ぶ、芝1800mの新馬戦における歴代最速タイムでした。その後、素質を順調に開花させ、無傷の3連勝でGI制覇。血統的に距離延長は歓迎で、東京芝2400mはぴったりです。
血統で振り返る東京大賞典
【Pick Up】フォーエバーヤング:1着
父リアルスティールはラヴズオンリーユー(BCフィリー&メアターフ、オークスなどGIを4勝)の全兄。「ディープインパクト×ストームキャット」という組み合わせは、キズナ、ダノンキングリー、サトノアラジンなど、国内外で9頭のGI馬を誕生させているニックスです。
キズナに比べると脚長でスラリとした馬体ですが、2代母モネヴァッシアが名種牡馬キングマンボ(キングカメハメハの父)の全妹で、母が「ストームキャット×ミスタープロスペクター」というアメリカ血統同士の組み合わせ。レーベンスティール(オールカマーなど重賞3勝)のような芝向きの活躍馬だけでなく、配合次第でダート向きの仔も出します。たとえば、フォーエバーヤングと同じ3歳馬のチカッパは、北海道スプリントCと東京盃を連勝し、JBCスプリントでハナ差2着。ダート短距離路線の頂点を狙える逸材です。同馬の母は生粋のダート血統で、母の父イントゥミスチーフは6年連続北米チャンピオンサイアーです。
フォーエバーヤングの母フォエヴァーダーリングは、ダート6.5ハロンの米G2サンタイネスSの勝ち馬。チカッパの母と同じくパワー型の血統です。母の父コングラッツはエーピーインディ系で、日本ダービー馬ダノンデサイルの母の父。3代母ローミンレイチェルはダート7ハロンの米GIバレリーナHの勝ち馬で、その直系子孫から年度代表馬ゼンノロブロイ、今年のBCクラシックを勝ったシエラレオーネなどが出ており活力満点です。
フォーエバーヤングにしろチカッパにしろ、ダート向きに出たリアルスティール産駒の強豪は、他の種牡馬と比べても能力の上限が高いという傾向が見て取れます。
フォーエバーヤングの妹ブラウンラチェットはアルテミスSの勝ち馬。その父キズナはリアルスティールと同じ「ディープインパクト×ストームキャット」なので、兄妹の血統構成は8分の7まで一緒です。ただ、キズナ産駒の牝馬は芝向きに出やすく、勝ち星の約4分の3が芝でのもの。牝馬のブラウンラチェットは芝にうまく適応しています。とはいえ、兄が偉大なダートホースですから、ダートで走らせたらやっぱり強かった、という可能性もあるでしょう。
知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【ブライアンズタイム】
差し脚を武器にフロリダダービー(米G1・ダ9ハロン)、ペガサスS(米G1・ダ9ハロン)など制覇。日本で種牡馬入りし、初年度産駒からナリタブライアン(三冠、有馬記念、朝日杯3歳S)とチョウカイキャロル(オークス)を、2年目にマヤノトップガン(菊花賞、有馬記念、天皇賞(春)、宝塚記念)を出しました。
1990年代後半からの数年間、サンデーサイレンス、トニービン、ブライアンズタイムの種牡馬3頭を“御三家”と称し、1996年以降の7年間でこの3頭が総合種牡馬ランキングのベスト3を6回占めました。その後、サンデーの一強体制に収斂していくなかで、ブライアンズタイムはダート方向に傾いていき、タイムパラドックス、フリオーソをはじめ多くの砂の猛者を生み出しました。馬場の改良も相まって、スピードと瞬発力が求められる競馬が増えていくと、サンデーサイレンスに対抗するのは難しかった印象です。
ロベルトとリボーという底力満点の血を併せ持つため、スタミナを必要とするビッグレースに強いという特長がありました。サニーブライアン(皐月賞、日本ダービー)、タニノギムレット(日本ダービー)、シルクジャスティス(有馬記念)、ファレノプシス(桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯)、シルクプリマドンナ(オークス)、ノーリーズン(皐月賞)、ヴィクトリー(皐月賞)、ダンツフレーム(宝塚記念)、マイネルマックス(朝日杯3歳S)といったGI馬を出しています。
直系の孫に女傑ウオッカ、母の父としてはダート王エスポワールシチーを出しています。近い世代にブライアンズタイムの血を持つ馬は、ダート競馬における信頼感が高まります。
血統に関する疑問にズバリ回答!
「2025年に産駒がデビューする新種牡馬にはどんな馬がいますか?」
2024年のJRA新種牡馬ランキングは、1位サートゥルナーリア、2位ナダルで確定しました。最後のホープフルSでサートゥルナーリア産駒の13番人気クラウディアイが5着に食い込み、賞金を700万円上積みしたことでナダルを逆転する、という劇的な展開でした。JBISの集計ではわずか650万3000円の差です。この2頭は非サンデー系です。
2025年に産駒がデビューする新種牡馬で最も注目すべきは三冠馬コントレイルでしょう。初年度の血統登録頭数は130頭と多く、繁殖牝馬の質、産駒のデキも抜群。育成牧場からは、いい意味で産駒に軽さがあり、ほぼ間違いなく走ってきそう、との声が伝わってきます。2024年のチャンピオンサイアーとなった同じノースヒルズの生産馬キズナにどれだけ迫れるか、あるいは超えてくるのか注目です。
ダートではクリソベリルに注目です。父は砂の名種牡馬ゴールドアリュール、母は名繁殖牝馬クリソプレーズ。現役時代に帝王賞、JBCクラシック、チャンピオンズC、ジャパンダートダービーといったビッグレースを制覇しました。初年度の血統登録頭数は112頭。コントレイルと同じくノーザンファームの手厚いバックアップを受けています。この2頭はいずれもサンデーサイレンス系です。
この他、ダノンスマッシュ、ダノンプレミアム、ミスチヴィアスアレックス、マテラスカイ、ベンバトル、インディチャンプ、フィレンツェファイア、キセキ、ダノンキングリー、ポエティックフレアなどがいます。