レコードに迫る好時計決着 各馬のパフォーマンスの評価は
中山金杯を制したアルナシーム(撮影:下野雄規)
近年、中山金杯2000mが前半から息の入りにくいハイペースになることはなく、例年は前半1000m通過60秒台が標準。速くても59秒台後半だったが、今年は前後半の1000m「58秒7-59秒4」=1分58秒1。この10年ではもっとも厳しい流れで、勝ち時計は中山金杯レコード(2015年ラブリーデイの1分57秒8)と0秒3差、史上2位の走破時計が記録された。前半1000m通過58秒7は1996年以降最速なので、レース史上最速だった可能性大と思える。
先行抜け出しタイプが多く、スローになる予測はなかったが、やや気負い気味だった1番人気のクリスマスパレード(父キタサンブラック)が1コーナーでハナを切る形になると、強気なH.ドイル騎手の2番人気馬ホウオウビスケッツ(父マインドユアビスケッツ)がこれを厳しくマークし、単騎逃げは許さない展開。他の先行タイプも速いペースを離されずに追走の流れは、追い込み馬有利の展開になった。
勝った4番人気の6歳牡馬アルナシーム(父モーリス)は、祖母が名牝ドバイマジェスティ。母ジュベルアリ(父ディープインパクト)の全弟には、皐月賞馬アルアイン、日本ダービー馬シャフリヤールがいる。1600mにも、1800mにも快時計があり、今回の2000m1分58秒1も自己最高。出世が遅れて6歳春となったが、もうひと回りパワーアップできるはずだ。
2着マイネルモーント(父ゴールドシップ)はオープン入りして2戦目の快走。まだ今回が15戦目の5歳馬。着実に成長しているので、勝ち馬と同様にまだまだスケールアップが期待できる。距離適性の幅も広いと思える。
昨年の中山金杯を1分59秒2で小差4着していた6歳ボーンディスウェイ(父ハーツクライ)も確かな成長力を示し、こちらは厳しいペースを離れずに追走しての上位入線だから価値がある。一段とタフになった印象を与えた。
この厳しいペースを寸前まで粘っていた牝馬クリスマスパレードは、非常に残念な4着。執拗にマークされ息を入れる場面がなかった。今回は気負っていたからの逃げ戦法だったと思える。本当は好位の外で折り合って先行したかったはずだ。
人気の1頭シンリョクカ(父サトノダイヤモンド)は、揉まれない外枠歓迎と思えたが、前にカベが作れなかったせいか、うまくタメが利かなかった。これまでの成績から内枠の際に好走例が多い。
着外に終わった馬の中では、渋い差し脚を見せた6歳パラレルヴィジョン(父キズナ)に不振脱出の気配が見えた。15番人気だった5着の6歳ギャラクシーナイト(父ドゥラメンテ)のゴール寸前の脚も目立った。次走もハンデ戦なら怖い。
ホウオウビスケッツは59.5キロのトップハンデのため、差す脚はないので果敢な先行策に出たが、ハイペース向きではない死角が出てしまった。また、相対的にハンデ(負担重量)が重くなっているので大きな不利ではないと思えたが、これで中山金杯では1993年に59.5キロのパワー型カリブソングが2着したのを最後に、ハンデ59キロ以上馬は1頭も3着以内に好走がない記録が続いている。