アルナシームが中山金杯を勝利 近親には今年から種牡馬入りのシャフリヤールも
血統で振り返る中山金杯
【Pick Up】アルナシーム:1着
今年から種牡馬入りするシャフリヤール(日本ダービー、ドバイシーマクラシック)は、有馬記念で大外16番枠の不利を克服して2着と健闘しました。母ジュベルアリはその全姉です。シャフリヤールの全兄にはアルアイン(皐月賞、大阪杯)がいます。
アルアイン、シャフリヤールを兄弟に持つ母ジュベルアリは、1歳時にサンデーサラブレッドクラブの募集ラインナップに入ったものの、故障により取り下げとなりました。アルナシーム(中山金杯、中京記念)を産んだ能力を考えると、無事ならばかなり優れた競走馬になっていたかもしれません。
2代母ドバイマジェスティは、BCフィリー&メアスプリント(米G1・ダ7ハロン)の勝ち馬で、子だけでなく孫の代からも重賞勝ち馬を出したことで血統的価値が一層高まりました。シャフリヤールは身体が丈夫で軽さがあり、気性的にも優れ、近親に活躍馬が並ぶ超良血だけに、種牡馬としては前途洋々でしょう。
「モーリス×ディープインパクト」の重賞勝ち馬は、他にジェラルディーナ(エリザベス女王杯、オールカマー)、ディヴィーナ(府中牝馬S)、ルークズネスト(ファルコンS)、アルテヴェローチェ(サウジアラビアRC)が出ています。連対率20.9%、1走あたりの賞金額262万円は、モーリス産駒全体の18.0%、201万円をそれぞれ上回っています。モーリス産駒のニックスといえるでしょう。
血統で振り返る京都金杯
【Pick Up】サクラトゥジュール:1着
皐月賞と日本ダービーの二冠を制覇したネオユニヴァースは、種牡馬としても成功し、ヴィクトワールピサ(皐月賞、有馬記念、ドバイワールドC)、ロジユニヴァース(日本ダービー)、アンライバルド(皐月賞)、ネオリアリズム(クイーンエリザベス2世C)などの大物を出しました。
キングカメハメハやディープインパクトなどの後輩種牡馬が台頭すると、ランキングは徐々に低下し、ダート方向にシフトしていきました。グレンツェント、ウェスタールンド、メイショウムラクモ、アムールポエジーといった馬がダート重賞を勝っています。母方が重厚なヨーロッパ血統で構成されており、ダートや力の要る芝は向いています。
母の父としてはルヴァンスレーヴ、アエロリット、デルマソトガケを出すなど気を吐き、芝・ダート兼用の優れた影響を伝える血として存在感を維持しています。
サクラトゥジュールは3歳春の芝1600m戦で1分31秒7の好タイムをマークするなど、ネオユニヴァース産駒にしてはスピード能力の高い馬ですが、「ネオユニヴァース×シンボリクリスエス」というパワー兼備の配合だけに、馬場の内側が荒れた今回は向いていたと思います。ちなみに、「シンボリクリスエス×ネオユニヴァース」という逆配合からダート王ルヴァンスレーヴが誕生しています。
母サクラレーヌは重賞を3勝したサクラプレジデントの半妹で、2代母セダンフォーエバーはダービー馬サクラチヨノオーの全妹。牝祖スワンズウッドグローヴは1970年に谷岡牧場がイギリスから輸入し、現在までにその牝系から12頭のJRA平地重賞勝ち馬が誕生しています。
知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【リヴァーマン】
フランス競馬界に大きな足跡を残したアレック・ヘッド氏は、2022年に97歳で亡くなりました。フレディ・ヘッド元調教師やクリスティアーヌ・ヘッド=マーレック元調教師の父で、長年にわたって調教師として偉大な成績を残し、所有するケスネー牧場はベーリングやトレヴというフランス競馬史に残る名馬を生産しました。
フランス競馬では1950年代後半以降、テキサナ、フラダンサー、シーバードといった北米血統を含んだ名馬が活躍し、そのスピードに魅せられた彼は、1960年代末以降、外国のセリへたびたび出かけ、アメリカ産馬を購買しました。同じ1969年生まれのリヴァーマンとリファールは、シャネルのオーナーだった故ピエール・ヴェルテメール氏の未亡人の代理人としてヘッド氏が購買した馬で、いずれも彼の厩舎からデビューしました。
リヴァーマンは、ミルリーフと同じネヴァーベンド産駒ですが、前者の母の父プリンスジョンと、後者の母ミランミルがいずれも「プリンスキロ×カウントフリート」という組み合わせなので、血統構成がきわめてよく似ています。リヴァーマンはミルリーフよりもスピード型で、ゴール前で繰り出す瞬発力を武器に、仏2000ギニーやイスパーン賞などを制覇しました。
種牡馬としてはトリプティク、ゴールドリヴァー、デトロワ、アイリッシュリヴァー、ルション、リヴリアなど多くの名馬を出し、1980、81年に仏チャンピオンサイアーとなりました。同国で7年間供用されたあと、米ケンタッキー州に移り、ここでも成功を収めました。
リヴァーマンとリファールは、フランス生産界にモダンなスピードをもたらし、アレック氏の子供たちが管理したゴルディコヴァとトレヴ(いずれもカルティエ賞年度代表馬)には、両者の血が色濃く流れています。
リヴァーマンが与えた日本への影響力は大きく、ウオッカの母の父ルションはリヴァーマンの代表産駒の一頭です。スワーヴリチャード、モーリス、クリソベリル、ニューイヤーズデイ、フリオーソ、ディープブリランテにも含まれています。
血統に関する疑問にズバリ回答!
「総合リーディングサイアーとなったキズナは何が凄い?」
2015年に競走生活を終え、翌年から社台スタリオンステーションで種牡馬入りしたものの、最初の4年間はノーザンファームの生産頭数が少なめでした。繁殖牝馬の内訳をみると、日高の種牡馬とさほど変わらず、そのような状況下でもトップクラスの成績を残していたので、繁殖牝馬の質・量ともにグンと上昇した現4歳世代がブレイクしたのは当然の流れだと思います。
稼ぎどころが幅広いというのが最大のセールスポイントです。2024年は総合種牡馬ランキングと2歳種牡馬ランキングの双方で首位の座につきましたが、もうひとつ、障害戦のランキングでもトップに立ちました。また、JRAのダートのみを対象としたランキングでは第5位。ホッコータルマエ、マジェスティックウォリアー、パイロ、ダノンレジェンドといったダート向きの種牡馬よりも上です。
芝でもダートでも2歳戦でも障害でもコンスタントに稼げる能力は素晴らしく、馬主孝行の種牡馬といえます。サンデーサイレンス→ディープインパクト→キズナと、親子孫3代チャンピオンサイアーとなりましたが、今年の春から皐月賞馬ジャスティンミラノが種牡馬入りします。さらにサイアーラインを伸ばして行きそうです。