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「敬意の気持ちは忘れないように…」 小牧太騎手が明かす悲しい“別れ”との向き合い方

  • 2025年05月06日(火) 18時01分
太論

▲悲しい“別れ”との向き合い方を小牧太騎手が明かす(撮影:稲葉訓也)


リバティアイランドの悲しみが癒えないなか、小牧騎手にも悲しい別れが。5月1日、コンビ5戦目にして念願の勝利を挙げたタガノフリューゲルですが、ゴール後に異変を感じて、すぐに下馬。「悲しいかな、何度も経験してきているから…」という小牧騎手ですが、やはり心痛は隠せない様子。

今回の『太論』では、こういった事故を「どう受け止めて、どう乗り越えてきたのか」というファンの質問に対し、素直な思いを語ってくれました。

(取材・構成=不破由妃子)

骨折してしまったタガノフリューゲル「よう頑張ってくれた。よう踏ん張ってくれた」


──先週は、あと一歩の競馬が続いていたカーロアヴァンティとタガノフリューゲルで念願の勝利。タガノフリューゲルは、入線後に下馬をしたそうですが…。

小牧 あのレースは最高に乗れたんやけど、ゴール板を過ぎてから故障してしまって…。左前脚の骨折でね。

──そうでしたか。

小牧 ゴールして1コーナーを過ぎたところまでは何ともなかったんやけど、止めに掛かったときはもうダメやった。ちょっとトモが弱いところがあるから、ずっとスタートを出なかった馬でね。それが最近はコツをつかんで出るようになったんですわ。その矢先に残念なことになってしまって。最後によう勝ってくれたね。よう踏ん張ってくれた。ただ、何度経験してもたまらんね。かわいそうでたまらん。

──リバティアイランドの件があったので、「人それぞれだと思いますが、小牧さんは自身にああいった事故が起こったとき、どう受け止めて、どう乗り越えてこられたんですか?」という質問がきていたんですよね。

小牧 乗り越えていると言えるのかどうか…。悲しいことに、何度も経験しているからね。そうはいっても、かわいそうでたまらない気持ちになるのは変わらんし、かといって馬に乗るのが僕の仕事。毎週毎週、競馬は開催されているわけで、頭を切り替えるしかないんですわ。ただ、敬意の気持ちは忘れないようにしてます。よう頑張ってくれたねって。なんせ競走馬はね、全能力を発揮せんと勝たれへんから。

──小牧さんも、たくさん悲しい思いをされてきましたものね。2010年のアイビスサマーダッシュで故障してしまったカノヤザクラとか…。なんか忘れられない。

小牧 ああ、カノヤザクラはゴール寸前に故障してしまってね。すぐに下りたんやけど、どうしても馬は人間を頼るから、僕を追いかけてきて。あれは僕も忘れられんなぁ。

──忘れないことも大事な弔いですよね。では、こちらも気持ちを切り替えて。エイシンハリアーで挑んだ兵庫チャンピオンシップ(5月1日・園田11R・ダ1400m)は6着。4コーナーでは、「これはきたか…」と思うほどの手応えでした。

小牧 いやぁ、もう手応え抜群やった。4着はあると思ったんやけど、前を追いかけたぶん、6着になったという感じやね。結果論やけど、もうちょっと謙虚に乗っていたら4着はあったよ。なんせ、スタートがよすぎた。あのままハナに行っていたらどうなっていたかな…とも思うけど、どう見ても謙虚に乗らなしゃあないメンバーや。明らかにJRAの馬が強いなと思っていたから。今回は強いメンバーが揃ってた。

──それでも、4コーナーまではまったくスピード負けせずに。

小牧 そうそう。あの馬、大したもんやね。まぁ5着までにはきたかったけど、よう頑張ってくれたわ。あのレースは1着賞金が5000万やから、そりゃいい馬がくるよね。馬だけじゃなく、(武)豊くんもきてくれて。一緒に乗れるのは、やっぱうれしいもんやね。あとは、吉原(寛人)もきていたし。いまや、彼は日本一のジョッキーやで。勝ち鞍というより、存在そのものがね。

──金沢に所属しながら、全国を飛び回っているのが吉原さん。

小牧 重賞に限れば、頼まれればどこでも乗りに行けるから、彼はステッキ一本で全国各地に乗りに行ってるでしょう。豊くんと「来週は忙しいねん」なんて話をしていたんやけど、吉原なんて、園田のあとは盛岡に乗りに行っていたからね。

──小牧さんも全国各地に乗りに行きましょうよ。全国にファンがいるんですから。

小牧 いやいや、まずは頼まれんことには(笑)。吉原を見ていると「すごいなぁ」と思うけど、僕の場合、現役生活もあと数年やから。園田に腰を据えて頑張りたいという気持ちのほうが強いよ。

(文中敬称略)
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。2024年には再度園田競馬へ復帰し、活躍中。史上初の挑戦を続ける。

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