
▲吉原寛人騎手×坂井瑠星騎手対談第3回(撮影:稲葉訓也)
シリーズ企画「ご指名対談」。今回、金沢の“さすらいの重賞ハンター”吉原寛人騎手が指名したのは、先日のイギリス・シャーガーカップで存在感を示した坂井瑠星騎手です。
中央競馬と地方競馬、それぞれのフィールドで確かな実績を積み重ねるふたり。トップに立っても初心を忘れずにいられるか──それは、長く第一線で活躍できるかどうかの分かれ道でもあります。恩師から贈られた忘れられない言葉が、今も心の支えになっていると語るふたり。今回は、その“心に刻まれた一言”と、騎手人生の出来事TOP3を披露してもらいました。
さらに、吉原騎手が所属する金沢競馬は、先日の局地的大雨で厩舎が浸水するなど甚大な被害を受けました。インタビュー冒頭では、復旧を信じて準備を進める思いと、心を寄せてくださるファンへの感謝のメッセージも寄せています。
前回はこちら▼
【吉原寛人騎手→坂井瑠星騎手・ご指名対談】本馬場入場は海外遠征への第一歩──坂井騎手が実践する“世界仕様”の意識/第2回(取材・構成:大恵陽子)
本編の公開前に── 豪雨の影響で金沢競馬場は厩舎が浸水。その水位は酷い所では馬の腰まで達したといいます。翌日、ポンプ車が駆け付けての排水作業が行われたものの、金沢競馬は8月19日まで開催中止が決定されるなど被害は甚大です。金沢所属である吉原寛人騎手から、今回の災害を受けてファンのみなさんへメッセージをいただきました。
吉原寛人騎手のメッセージ 読者のみなさまへ
皆様の温かい応援、いつもありがとうございます。今回の局地的大雨で、金沢競馬場は過去に見たことのない水害に見舞われました。厩舎の愛馬たちも厩務員さんや獣医師のケアを受け、少しずつ元気を取り戻しています。
金沢競馬場が再び活気を取り戻す日を信じて、引き続き全力で準備を進めます。皆様の声援が、馬たちと私たちの背中を押してくれます。どうかこれからも変わらぬご支援をお願いいたします。
吉原寛人
天狗になりかけていた吉原騎手に、恩師が放った厳しいひと言
──瑠星騎手の成長スピードは外から見ていてもすごく早く感じます。本人はどう感じていますか?
坂井 ずっと積み重ねてきているだけで、何かが急に変わったということはありません。「いい馬に乗りたい」「大きいレースに勝ちたい」ということを目標にやり続けています。
吉原 そのストイックさと真面目さ、謙虚さがあるから、なるべくしていまの活躍をしていると思います。僕が若い頃、森秀行調教師に言われたことが「髪の毛、染めんじゃねえよ」っていうこと。
坂井 え、いつですか?
吉原 染めていた時期あったの(苦笑)。レースに勝ち出して調子に乗って、天狗になりかけていた頃。森先生は、僕がトゥインチアズっていう金沢所属馬で、JRA初騎乗初勝利をさせてもらったレースを見て声をかけてくれました。
それがきっかけでオーストラリアでの修行や、2006年ドバイゴールデンシャヒーンでアグネスジェダイに乗せていただいて、すごくいい経験をさせてもらいました。その時のひと言だったの。心にすごく残っていて、「調子に乗るなよ」ということだと思います。やっぱり、髪の毛の色に出てくるから。だけど、瑠星は染めないでしょ?

▲アグネスジェダイと挑んだドバイゴールデンシャヒーン(撮影:高橋正和)
坂井 いやいや(苦笑)。
吉原 競馬に集中していたら、染めている暇はないんですよ。もう馬のことばっかり考えているんで。
坂井 初心を忘れずに、ということは意識しています。はみ出しそうになったら