松本騎手は5回目の挑戦で重賞初制覇

AR共和国杯を制したミステリーウェイ(撮影:下野雄規)
昨年の勝ち馬はベテラン8歳のハヤヤッコ(父キングカメハメハ)。10番人気で道中最後方から直線大外一気の追い込み勝ちだった。2着クロミナンス(父ロードカナロア)も7歳馬。2023年にも7歳馬マイネルウィルトス(父スクリーンヒーロー)が後方から追い込んで2着しているのが、ごく最近の「アルゼンチン共和国杯」。
今年は絶妙の単騎逃げに持ち込んだセン馬7歳のミステリーウェイ(父ジャスタウェイ)の鮮やかな逃げ切り勝ちだった。JRA重賞初挑戦なので、もちろん重賞初制覇。
つい最近まで、のちの長距離のビッグレースを展望する3歳、4歳馬の快走が多かったが、タフなステイヤータイプが少なくなったことも関係し、出世レースというより「まだ活力は残っている」、そんなベテランの逆転快走が目立ち、今年はセン馬が4頭もいた。
ただし、騎乗していたのは若手の成長株「松本大輝(ひろき)騎手(23歳)」。重賞レースは5回目の挑戦で、これが初勝利だった。手がける小林真也調教師もまだ若い新進トレーナーで、平地の重賞制覇は今回が初めてだった。「見事、あっぱれ」が幾重にも重なった素晴らしい重賞制覇だった。
ミステリーウェイは、前走の丹頂S・2600m(稍重)では8日の豪G3クイーンエリザベスSを3着したゴールデンスナップ(父ゴールドシップ)に完勝しているとはいえ、前後半「1分15秒8-(13秒3)-1分15秒7(上がり36秒4)」のかなり平凡な時計だった。スローで行けても東京の2500mは厳しいと思えた。
松本騎手も「そこまで自信はなく、馬の気持ちを走る方向に向かわせることが仕事」と考えたというが、難しい長距離2500mで主導権を握った前後半バランスは、丹頂Sとは逃げ馬としてのレベルが異なる「1分12秒3-(6秒2)-1分11秒7(上がり34秒6)」=2分30秒2だから立派だ。東京の芝2500mを「2分30秒0前後」で乗り切れれば、ステイヤーとしてトップクラスとされる。これを、東京芝では初コンビで押し切ったのだから、文句なしの快勝である。大逃げではなく、マイペースの勝利だった。
7月の札幌日経賞2600mでは完敗だったスティンガーグラス(父キズナ)に雪辱を果たした。そのスティンガーグラスの主戦ジョッキーのC.ルメール騎手が「うまく逃げ切られてしまった。仕方がありません」と、ミステリーウェイ=松本騎手の今回の快走を祝福している。36戦6勝のミステリーウェイは早くから去勢馬になって最少時466キロだった馬体が、最近は500キロを超えて充実している。ステイヤーズS3600mに挑戦するかもしれない。
2着したスティンガーグラスの単勝1番人気は、この日の他のレースと同様に「C.ルメール人気」だったと思えるが、ゴール寸前でもう一回伸びたあたりはしぶとい。3着に伸びてきたディマイザキッド(父ディーマジェスティ)と共に十分に価値がある。2頭はまだ4歳。それで「2分30秒3」は標準以上の好タイムだ。さらにパワーアップして、長距離戦向きのスタミナ強化を図りたい。
上がり最速の34秒0は、5着シュトルーヴェ(父キングカメハメハ)と、大外から伸びかかったニシノレヴナント(父ネロ)。ただ、戦方に注文のつくタイプは、バランスの取れた今回のような平均ペースで流れた長距離戦は苦しかった。